精神科デイケアとは、精神障がいのある方が社会参加を目指して通所するリハビリテーションの場です。
精神科デイケアには、コミュニケーションスキルが向上したり、生活リズムが整ったりするメリットが期待できます。
しかし、集団活動が多いため、他者との交流が苦手な方にとっては、通所することがストレスになる場合もあるでしょう。
精神科デイケアを利用する際は、プログラムや施設の雰囲気が自分に合っているかを事前に確認しておくことが大切です。
そこで本記事では、精神科デイケアの具体的なプログラム内容や利用料金、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
利用するときの流れも解説しているので、精神科デイケアへの通所を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

精神科デイケアとは

精神科デイケアとは、精神障がいのある方が社会参加や就労などを目標に、さまざまな活動やリハビリテーションをする場です。
主に精神科がある病院やクリニックに通い、医師や看護師、作業療法士などの専門職のサポートを受けながら、社会参加や就労に必要なスキルの向上を目指します。
ここでは、精神科デイケアの対象者やプログラムを解説します。
対象者
精神科デイケアの対象者は、うつ病や統合失調症などの精神疾患で通院治療を受けている方です。
ほかの利用者との交流や集団活動ができ、入院の必要がない程度に病状が安定している方を対象としています。
精神科デイケアは、通院中の病院やクリニックで受けるのが一般的です。
ただし、施設によっては統合失調症の方のみを対象としたり、年齢制限を設けていたりするような独自の条件を定めている場合があります。
利用を検討している方は、事前に施設の利用条件を確認しておきましょう。
プログラム内容
精神科デイケアでは、以下の訓練が受けられます。
プログラム内容 | 具体例 |
文化系 | 料理、書道、茶道、生け花 など |
運動系 | 体操、ヨガ、卓球 など |
SST(ソーシャルスキル・トレーニング) | ロールプレイやグループワークを行う |
就労支援 | 履歴書の作成や面接練習 など |
SST(ソーシャルスキル・トレーニング)とは、コミュニケーション力や自己管理能力を高めるためのトレーニングのことです。
一般的には5〜8人程度の少人数のグループに分かれて、日常生活で起こりそうな場面を想定し、課題に直面したときの解決方法を学んだり話し合ったりします。
トレーニングの一環としてロールプレイをすることもあります。
ロールプレイとは参加者が役になりきって、困った場面に遭遇したときの適切な対処を演じて体験することです。
実際に課題に直面したときにどのようにふるまえばよいのかを事前にイメージしておくことができます。
相手の立場に立って考える力も身につくので、コミュニケーション力の向上が期待できるトレーニングです。
なお、精神科デイケアで受けられる就労支援は、医療リワークとも呼ばれ、主に復職を目標にする方を対象としています。
ただし、医療リワークを受けられない精神科デイケアもあるので、事前に支援の有無を確認しておきましょう。
リワークの概要やメリットについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
精神科デイケアの利用料金

精神科デイケアは治療の一環として健康保険が適用されるので、自己負担が3割で受けられます。
加えて、自立支援医療を利用すれば、自己負担が1割まで削減できます。
精神科デイケアを自立支援医療で受けたときの利用料金の目安は、以下の通りです。
1日利用した場合 | 半日利用した場合 | |
デイケア利用料金 | 800円前後 | 400円前後 |
1日3時間程度のショートケアを利用すると、半日分の料金で利用できます。
なお、これらの料金はあくまでも目安であり、実際の料金は利用施設によって異なります。
長期間利用すると、負担が大きくなってしまうので、申し込み前に料金目安を確認しておきましょう。
また、デイケアの利用料金は通院費と合算でき、所得区分に応じて自己負担上限額が以下の6段階に分かれています。
自立支援医療の対象になるには、医師が書いた自立支援医療診断書を準備し、自治体の窓口での申請が必要です。
自立支援医療の申請方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
精神科デイケアのメリット

精神科デイケアを利用するメリットは、以下の3つです。
- コミュニケーションスキルが向上する
- 生活リズムが整う
- 専門職に相談できる
コミュニケーションスキルが向上する
精神科デイケアでは、グループで取り組むプログラムが受けられます。
ほかの利用者やスタッフと交流する機会が多いので、コミュニケーション力を身につけられるメリットがあります。
コミュニケーション力が向上すれば、対人関係がスムーズになる効果も期待できるでしょう。
利用者との関わり方で悩んだときはスタッフに相談できるので、トラブルが発生する心配が少ないのも魅力です。
生活リズムが整う
精神科デイケアに定期的に通所することで起床時間が安定し、昼夜が逆転するのを防げるメリットもあります。
日中の活動がないと、起床時間や就寝時間がバラバラになって生活リズムが乱れやすくなります。
デイケアを利用して生活リズムが整えば、病気の悪化や再発予防にもつながるでしょう。
昼夜逆転しやすいという方は、生活リズムを整えて精神的な安定を保つためにもデイケアの利用を検討してみるのがおすすめです。
専門職に相談できる
精神科デイケアには医師や看護師、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士などの専門職がいます。
そのため、自身の症状や日常生活での問題について困ったときはいつでも専門家に相談できます。
体調のわずかな変化を感じたときや、受診するほどではないけれど専門家に聞きたいといったときでも、気軽に相談しやすいでしょう。
定期的に通所することで顔見知りのスタッフが増えれば、些細なこともより一層相談しやすくなります。
精神科デイケアのデメリット

精神科デイケアのデメリットは、以下の2つです。
- 集団活動を苦痛に感じる場合がある
- 専門的な就労支援を受けられない可能性がある
集団活動を苦痛に感じる場合がある
コミュニケーションが苦手な方にとって、精神科デイケアの集団活動は負担になる可能性があります。
特に、大人数でのプログラムに参加することで、不安やストレスを感じやすくなる方もいるでしょう。
集団活動が苦手でなくとも、グループの雰囲気やほかの利用者との相性によっては居心地の悪さを感じるケースもあります。
多くのデイケアでは利用者が無理なく参加できるよう、短時間の参加や少人数グループの活動にも対応しています。
不安がある場合は、事前に施設の雰囲気を確認したうえで、適切なサポートを受けられるのかを確認しておきましょう。
専門的な就労支援を受けられない可能性がある
精神科デイケアで働くスタッフは医療従事者であるため、就労支援の専門家ではありません。
そのため、就労に関する具体的なアドバイスや十分な情報提供が受けられない可能性があります。
専門的な就労支援を受けたい場合は、就労移行支援などの福祉サービスを利用するのがおすすめです。
就労移行支援とは、障害のある方を対象に、就労に必要な訓練や適正に合った職場探しのサポートをする福祉サービスです。
就労移行支援のサービス内容や利用方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
精神科デイケアの利用の流れ

精神科デイケアの利用の流れは、以下の通りです。
- 主治医にデイケアを利用したいことを伝える
- 利用したいデイケアの施設に連絡したうえで見学や面談をする
- 体験利用する
- デイケア担当医師の診察を受ける
- 利用開始
精神科デイケアを利用するためには、まず主治医に通所できる状態であるかを判断してもらう必要があります。
主治医からの承諾が得られたら、利用したいデイケア施設の見学や面談をしましょう。
デイケアによっては見学と体験利用が一緒に行われたり、体験利用がなかったりする場合もあります。
見学や体験利用の際は、どのようなプログラムが行われているか、自分にとって過ごしやすい雰囲気かどうかをチェックすることが大切です。
利用を決めた後はデイケア担当の医師の診察を受けることとなりますが、主治医とデイケア担当の医師が同じ場合は診察が省略されるケースがあります。
診察でデイケア利用が認められれば、正式に利用を開始できます。
精神科デイケアを利用して専門家のサポートを受けよう
精神科デイケアでは、精神障がいのある方が社会参加を目指すためのリハビリテーションを受けられます。
精神科デイケアにはコミュニケーションスキルの向上や、専門職のサポートを受けられるといったメリットがあります。
ただ、集団活動が苦手な方にとっては、通所することが精神的ストレスとなる場合もあります。
ストレスが少なく通いやすいデイケアを選ぶためにも、見学や体験利用をして、自分に合う環境かどうかを確認しておきましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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