病気やケガによって日常生活が制限されている方に支給される障害年金。障害の程度や手続き状況によっては受け取れないことをご存じでしょうか。
障害年金は必要な手続きを行わなかったり、一定以上の所得を受け取ったりした場合に支給されない可能性があります。
本記事では、障害年金が支給されないケースと状況別の解決方法を紹介します。
障害によって働けなくなったときのためにも、どのような状況で障害年金をもらえないのかを押さえておきましょう。
障害年金がもらえないケース
障害年金がもらえなくなってしまうケースを大別すると、以下の3つが挙げられます。
- 障害が軽くなったとき
- 障害状況確認届を期日までに提出しなかったとき
- 所得制限に該当したとき
1.障害が軽くなったとき
障害がある方に支給される年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2つの制度があり、それぞれ支給対象とされる障害状態が異なります。
基準となる障害状態は「障害等級」で表され、国民年金法施行令によって定められています。
障害基礎年金は1〜2級、障害厚生年金は1〜3級が支給対象とされているため、下位等級に該当した場合は支給対象とならないのです。
なお、障害状態は定期的に審査が行われ、前回の審査や認定時から障害状態が軽くなっていれば障害年金の停止・減額が行われます。
支給対象となる障害等級は、日本年金機構にて公表されているので、自身がどの状態に該当するかを確認しておきましょう。
2.障害状況確認届を期日までに提出しなかったとき
障害状態の審査は1〜5年ごとに行われ、誕生月の3ヶ月前に「障害状況確認届」が年金支給対象者に送付されます。
障害状況確認届は、誕生月の末日までに医療機関での診断書とともに提出しなければなりません。
この提出期限に遅れたり、提出しなかったりすると、障害年金の支給が停止されるケースがあります。
支給停止となった場合であっても、障害状態が確認できれば、支給停止されていた金額分も合わせて支給されるので、可能な限り早く提出しましょう。
なお、障害状態が明らかに改善することがないと判断され「永久認定」を受けている方は、障害状況確認届を提出する必要がありません。
年金証書の「次回診断書提出年月日」の欄に日付の記載がなければ、永久認定されているかが確認できます。
3.所得制限に該当したとき
障害基礎年金には、一定以上の所得がある場合に支給停止・減額となる「所得制限」が設けられています。
ただし、全ての受給者が対象となるわけではなく、20歳以前の傷病によって障害年金を受け取っている方が対象です。
出典:日本年金機構 20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等
図のように所得が3,704,000円を超えた場合は2分の1が支給停止、4,721,000円を超えた場合には全額支給停止となります。
なお、扶養親族がいる場合は、以下の金額を所得から控除できます。
扶養親族 | 38万円/人 |
老人控除対象配偶者・老人扶養親族 | 48万円/人 |
特定扶養親族・19歳未満の控除対象扶養親族 | 63万円/人 |
また、恩給や労災保険等の年金などを受け取った場合にも支給調整が行われる可能性があります。
【状況別】障害年金がもらえないときの対応
障害年金が支給停止されても、所定の手続きを行えば、支給が再開される可能性があります。
ここでは、障害年金がもらえなくなった際の対応方法を紹介します。
審査請求を行う
障害年金の支給金額や障害等級などの決定に不服がある場合は、審査請求が行えます。
審査請求を行うには、障害等級の決定を知った日の翌日から3ヶ月以内に地方厚生局へ「審査請求書」を提出する必要があります。
なお、審査請求後の決定にも不服がある場合には、決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヶ月以内に社会保険審査会へ再審査を請求することも可能です。
ただし、一度決定された支給金額や障害等級を覆すことは容易ではありません。
審査請求が認められる可能性を上げるためにも、請求書の記載方法などを専門家に相談してみましょう。
支給停止事由消滅届を提出する
障害年金が支給停止になった方が、再び障害状態に該当した際に「支給停止事由消滅届」を提出すると障害年金の支給が再開されます。
支給停止事由消滅届に提出期限はなく、65歳までであればいつでも提出可能です。
ただし、医師の診断書が必要となるため、支給停止時と同じ症状で提出しても、認められることは基本的にありません。
なお、支給停止事由消滅届は、障害年金が支給停止となった場合のみ提出できるもので、支給額が減額された際には利用できないので注意しましょう。
障害年金がもらえないときは状況に合わせて対応しよう
障害によって生活が制限されたり、働けなかったりする方にとって、障害年金はなくてはならない存在です。
なかには、障害等級の決定や変更によって障害年金の支給が受けられなくなってしまう方もいます。
そういったときは、本記事で紹介した審査請求や支給停止事由消滅届を活用して、適切な支給が受けられるように対応しましょう。
また、申請方法や書類の記載方法がわからない場合は、社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。
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