リワークとは、うつ病などの精神疾患で休職している方を対象に、復職に向けて支援するプログラムのことです。
リワークを利用することによって、生活リズムが乱れにくくなったり、病気の再発率が低くなったりするなどのメリットがあります。
ただし、リワーク施設によっては費用がかかることがあるので、公的制度を利用して自己負担額を軽減することが大切です。
そこで本記事では、リワークが利用できる施設と費用、リワークのメリットやデメリットを紹介します。
リワークを利用して復職への不安を軽減したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
リワークとは
リワークとは、return to workの略で、うつ病や統合失調症などの精神疾患を原因として休職している方に対し、職場復帰をサポートするプログラムです。
リワークでは、復職に向けて以下のような訓練を行います。
訓練内容 | 目的 |
軽作業 | 作業遂行能力を向上させる |
疾病教育 | 再発予防のために自らの疾患の理解を深める |
運動やレクレーション | 体力を向上させる |
認知行動療法 | 自分の思考や行動を振り返り、状況の捉え方を修正する |
社会生活技能訓練(SST) | コミュニケーション能力などを高めて、社会生活を送りやすくする |
通勤訓練 | 復職後の心理的負荷を予測する |
これらの訓練をすべて実施するわけではなく、休職前に行っていた仕事内容や現在の病状によって、プログラムが異なる場合があります。
リワーク施設の担当者と相談しながら、必要な訓練を受けることになります。
リワークが利用できる施設と費用
リワークは以下の4つの施設で利用でき、費用がそれぞれ異なります。
- 病院やクリニックなどの医療機関
- 就労移行支援事業所
- 障害者職業センター
- 企業内リワーク
それぞれの施設の特徴や費用を解説します。
病院やクリニックなどの医療機関
精神科や心療内科の医療機関が主体となって行われるリワークは、医療リワークとも呼ばれます。
医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士といった専門職によって病状の回復や安定を目指しながら、復職に向けた支援を受けられるのが特徴です。
医療リワークは健康保険が適用されて、費用の3割が自己負担となります。
自立支援医療制度を活用すれば1割負担になるので、約800円/日程度で利用できる場合が多いでしょう。
さらに、前年度の所得区分によって、1ヶ月あたりの自己負担額が以下のように定められます。
うつ病や統合失調症などの精神疾患は、重度かつ継続に該当するため、一定所得以上の方でも20,000円以上の自己負担が発生することはありません。
自立支援医療制度は、通院による精神医療の自己負担額を軽減する制度であるため、リワークだけでなく精神科や心療内科での治療費も対象になる制度です。
精神科や心療内科へ通院している方は、速やかに申請しておきましょう。
自立支援医療制度の申請方法については、以下の記事で紹介しています。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障がいのある方を対象に就労に必要なリハビリを行う障害福祉サービス施設です。
すべての就労移行支援事業所がリワークを実施しているわけではありませんが、障がいのある方の就職支援を行う事業所であるため、復職に向けた適切なサポートが受けられます。
就労移行支援事業所は、障害福祉サービスとして国や自治体から利用料金の9割が補助されるので、残り1割が自己負担となります。
1ヶ月ごとの上限額は以下のように定められており、上限額以上の負担はありません。
世帯の収入状況(前年度) | 負担上限月額 |
生活保護世帯 | 0円 |
低所得(市民税非課税世帯) | 0円 |
一般1(市民税課税世帯 所得割16万未満) | 9,300円 |
一般2(上記以外) | 37,200円 |
就労移行支援事業所を利用するためには、自治体に障害福祉サービスの利用申請が必要です。
就労移行支援の利用方法については、以下の記事で紹介しています。
障害者職業センター
障害者職業センターは、各都道府県に最低1ヶ所ずつ設置されている専門的な職業リハビリ施設です。
障害者職業センターのリワークは、職リハリワークと呼ばれ、本人と雇用主、主治医の三者の協働体制を作り、職場復帰を支援することが特徴です。
復職に向けた情報が雇用主にも情報共有されるため、職場復帰もスムーズに進みやすい点がメリットといえるでしょう。
障害者職業センターのリワークの対象者は、雇用保険に加入している事業所とその従業員が対象となるので、公務員は利用できないことに注意が必要です。
職リハリワークは、原則費用がかかりません。
ただし、通所するための交通費や昼食代はかかるので、あらかじめ認識しておきましょう。
企業内リワーク
企業内リワークとは、企業が従業員の復職のために行うプログラムのことを指します。
企業内リワークは企業側が費用を負担するので、利用者の負担はありません。
休職者が復職後に仕事ができるかを見極めることを目的としていますが、リワーク制度を整備していない企業も多くあります。
リワーク制度があるかわからない場合は、会社の人事担当者などに確認してみましょう。
リワークを利用するメリット
リワークを利用して復職を目指すメリットは、以下の2つです。
- 生活リズムが乱れにくい
- 病気の再発率が低くなる傾向がある
生活リズムが乱れにくい
リワークを定期的に利用すると、心身の調子が整いやすく、生活リズムが乱れにくくなります。
休職中は、心身を回復させるための休養が最も大切とされていますが、時間に縛られない生活になります。
仕事に合わせた生活ではなくなるため、起床時間が遅くなるなど生活リズムが乱れやすくなる場合もあるでしょう。
生活リズムが乱れると、体調が悪化したり疲労やストレスを感じやすくなったりすることにつながります。
決まった日時にリワークに通うことで、生活リズムが整い、心身ともに復職準備につながる点はメリットとなるでしょう。
病気の再発率が低くなる傾向がある
リワークを利用して復職をすると、うつ病などの再発率が低くなる傾向があります。
うつ病の5年以内の再発率は4〜6割程度といわれていますが、リワークの利用により再発率が低くなることが知られています。
リワークを利用して生活リズムを保ったり、認知行動療法で自分の思考や行動を振り返ったりすることは再発予防につながるといえるでしょう。
また、心身の状態をふまえて復職時期を相談できる専門職も重要な存在です。
復職時期を慎重に判断し、復職後も適切なフォローを受けることによって心身状態の悪化を防ぐことができるでしょう。
リワークを利用する際の注意点
リワークを利用する際の注意点は、以下の2つです。
- 費用がかかる場合がある
- 職場復帰まで一定の期間がかかる
費用がかかる場合がある
上述したように、医療機関と就労移行支援事業所でリワークを受ける際には、費用がかかる場合があります。
また、地域障害者職業センターや企業内リワークの利用料は無料ですが、交通費や昼食代は自己負担になることが多いです。
リワークを受ける前に、あらかじめ自己負担がどれくらいかかるかを確認しておくとよいでしょう。
職場復帰まで一定の期間がかかる
リワークの実施期間は3~6ヶ月が基本となるため、職場復帰まで一定期間が必要です。
心身の回復を確認してから復職を推奨されるので、なるべく早く復職したいと考えている方には、デメリットになる場合があるでしょう。
プログラムの途中でも心身の状態が改善して復職を希望する場合は、職場復帰が可能です。
ただし、自身で改善を感じても、他者から見ると回復途中である可能性もあります。
復職の目途を確認したい場合は、医師やリワーク施設の職員に相談してみましょう。
リワークを利用して復職への不安を軽減しよう
リワークは、うつ病などの精神疾患によって休職している方が復職のために行うプログラムです。
リワークを受けることで生活リズムが乱れにくくなったり、病気の再発率が低かったりするメリットがあります。
復職後の体調変化や働き方に不安がある方は、リワークの利用がおすすめです。
自分の状態に合ったリワークを利用するためにも、事前に見学したり問い合わせたりして最適なリワーク施設を選びましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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