身体障害者手帳の交付を受けていたり、精神疾患の通院治療を継続的にしていたりする際に、医療費の自己負担を軽減できる制度があることをご存じでしょうか。
自立支援医療制度では、心身の障害を除去または軽減するための医療費を公費で負担してくれます。
ただし、指定外の医療機関で治療を受けたり、複数の医療機関を無断で受診したりすると、制度の対象外となってしまうので注意が必要です。
本記事では、自立支援医療制度の概要と利用時の注意点を紹介します。治療にかかる医療費に負担を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
自立支援医療制度とは
冒頭のように自立支援医療制度は、心身の障害を除去または軽減するためにかかる医療費負担を軽減するための制度です。
ここでは、制度対象者と自己負担金額を詳しく紹介します。
自立支援医療制度の対象者
自立支援医療制度は、以下の治療を行っている人が対象となります。
- 精神通院医療(統合失調症などの精神疾患の通院治療を継続して行う)
- 更生医療(身体障害者手帳の交付対象となった障害を除去・軽減する効果が期待できる治療)
- 育成医療(18歳未満の児童の障害を除去・軽減する効果が期待できる治療)
具体的な障害や疾患には、白内障・関節硬直・統合失調症・てんかん・先天性耳奇形・口蓋劣などが挙げられます。
自己負担となる金額
自立支援医療制度を利用した際の自己負担額は、収入や対象となる障害によって下図のように異なります。
所得区分は市町村民税によって分類され、治療内容と「重症かつ継続」であるかで判断されます。
重症かつ継続の範囲は「継続的に治療を必要とし、高額の医療負担が発生する者」と定義されており、以下の状況に該当した場合に認められます。
- 高額療養費制度の多数該当の方
- 所定の疾病・症状に該当する方
- 精神医療において一定以上の経験をもつ医師から計画的集中的な通院医療が必要と判断された方
なお、育成医療の中間所得1・2および「重症かつ継続」の一定所得以上の自己負担額は、令和6年3月31日までの経過的特例措置となるので注意しましょう。
自立支援医療制度の申請方法
自立支援医療制度の申請する際は、以下の書類を準備し、市区町村の担当窓口で手続きを行います。
- 自立支援医療費支給認定申請書
- 自立支援医療診断書または意見書
- 健康保険証または医療保険に加入していることが証明できる書類
- 住民税(非)課税証明書(世帯の所得状況を確認できる書類)
- 世帯調書(育成医療の場合)
- 身体障害者手帳の写し(更生医療の場合)
対象となる疾病によっては、特定疾病療養受領証などが必要となるケースもあるため、申請前に居住地の市区町村に確認しておきましょう。
自立支援医療制度を利用する際の注意点
自立支援医療制度を利用する際には、以下の注意点があります。
- すべての医療機関で利用できるわけではない
- 受給者証が届くまでに時間がかかる
- 複数の医療機関で利用できない
すべての医療機関で利用できるわけではない
自立支援医療制度の適用を受けるには、自治体が指定した医療機関で治療する必要があります。
指定外の医療機関で治療を受けると、自己負担額が増えてしまうので注意しましょう。
自治体が指定している医療機関を調べる際は「〇〇(都道府県名) 自立支援医療 指定医療機関」と検索してみてください。
受給者証が届くまでに時間がかかる
医療機関で提示が求められる「受給者証」が届くまでに2〜3ヶ月程度かかります。
なかには「自立支援医療費支給認定申請書」の控えで代用できる医療機関もありますが、すべての医療機関が対応しているわけではありません。
受給者証が届くまでの医療費負担を軽減するためにも、できる限り早めに申請手続きをしておきましょう。
複数の医療機関で利用できない
自立支援医療制度は原則、1ヶ所の医療機関のみが対象となります。
複数の医療機関で受診をした場合は、適用対象外となり、自己負担額が増加してしまう可能性があるので注意が必要です。
なお、単独の医療機関で必要な治療を行えないと主治医が認めた場合は、例外として複数の医療機関での治療が認められるケースがあります。
ほかの医療機関での受診を検討する際は、必ず主治医の意見を聞いてみましょう。
自立支援医療制度を活用して自己負担を軽減しよう
自立支援医療制度は、障害や疾患の継続的な治療にかかる医療費負担を軽減できる制度です。
ただ、すべての疾患や医療機関が対象となっているわけではないため、受診前に対象者に該当するのか否か、自治体が指定している医療機関であるかを確認しなければなりません。
治療後に適用対象外となってしまわないためにも、自立支援医療制度を活用する前に医師や社会保険労務士などの専門家に相談しておきましょう。
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