高次脳機能障害で障害年金を受給するには?受給要件や年金額を解説

福祉制度
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高次脳機能障害によって、日常生活や仕事に支障が出ている場合は障害年金の対象になります。

見た目ではわかりにくい高次脳機能障害は、他人から理解を得にくいこともある疾患です。

これまでの仕事が続けられず、経済的に不安を感じている方もいるでしょう。

そこで本記事では、高次脳機能障害で障害年金を受給する要件や年金額を解説します。

高次脳機能障害を理由として、障害年金を受給する方法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

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高次脳機能障害とは

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高次脳機能障害とは、脳外傷や脳血管疾患などによって脳に損傷を負うことで起きる障がいです。

高次脳機能障害が起きると、以下のような症状が出る場合があります。

障害名症状
記憶障害・新しい事を覚えられない
・同じことを繰り返し聞く など
注意障害・集中力が続かない
・ミスが多い など
遂行機能障害・時間通りに行動できない
・具体的な指示がないと動けない など
社会的行動障害・暴力的になる
・自己中心的な振る舞いが目立つ など
失語・言葉が出にくい
・言い間違いをする など
失行・物事の一連の動作が上手くできない など
失認・見えたり聞こえたりしているのに認識できない など

これらの症状は重複することも多く、人によって症状の重さは異なります。

外見からは障がいがわかりにくいので、他人から理解を得にくいことで本人や家族が負担を感じている場合もあります。

記憶障害や注意障害などの影響によって、今まで通りの仕事ができなくなることもあるので、休職や退職が必要になる方もいるでしょう。

高次脳機能障害は障害年金の対象となる

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高次脳機能障害の方も、障害年金の受給要件や認定基準を満たしていれば、受給対象者となります。

ここでは、障害年金の受給要件や認定基準、実際に受給できる年金額を解説します。

受給要件

障害年金を受給するためには、以下の3つの要件を満たしている必要があります。

  • 初診日に公的年金に加入していること
  • 障害認定日に障害年金を受給できる障がい等級に該当すること
  • 20歳時点から「初診日の前々月まで」の期間で保険料納付済み期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること

初診日とは、障がいの原因となった病気やけがで初めて医師の診断を受けた日のことです。

障害年金は、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類に分かれます。

初診日に国民年金に加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の請求が可能です。

20歳未満の方や60歳以上65歳未満で日本国内に住む方は、公的年金の加入義務がないので、初診日に国民年金に加入していなくても障害基礎年金の対象になります。

高次脳機能障害の初診日は、交通事故などによる脳外傷で初めて受診した日や脳血管疾患で救急搬送された日になるのが一般的です。

障害認定日とは、原則初診日から1年6ヶ月を経過した日のことです。

1年6ヶ月を経過した時点で障害年金の認定基準を満たしていれば、障害年金の対象となる可能性があります。

なお、高次脳機能障害によって休職する方は、障害年金が支給されるまでの1年6ヶ月間、傷病手当金を受けられる場合もあります。

ただし、仕事に就くことができないことや休業中に給与の支払いを受けていないことなどが対象条件です。

申請する場合は、事業主からの証明書が必要になるので、会社の総務課などに伝えて書類を準備してもらいましょう。

認定基準

高次脳機能障害における障害年金の認定基準は、以下の通りです。

障がいの程度 状態
1級他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできない状態
2級・必ずしも他人の介助は得なくてもよいが、1人で日常生活を送るのは極めて難しい
・収入を得ることができない状態
3級日常生活にはほとんど支障はないが、労働に著しい制限を受ける状態

障害基礎年金は1・2級、障害厚生年金は1〜3級の状態の方が対象になります。

これらの等級は診断書の記載内容などを通して、日常生活や社会生活にどの程度制約を受けているかによって決まります。

日常生活や仕事をするうえで困っていることがあれば、あらかじめ医師に伝えて、診断書に反映してもらうことが大切です。

年金額

障害年金の受給額は、障害等級や公的年金の種類ごとに異なります。

それぞれの年金額を見ていきましょう。

障害基礎年金

障害基礎年金の受給額は以下の通りです。

1級

67歳以下の方 993,750円+子の加算額 
68歳以上の方990,750円+子の加算額
※令和5年10月現在

2級

67歳以下の方 795,000円+子の加算額 
68歳以上の方792,600円+子の加算額
※令和5年10月現在

子どもの加算額は、2人まで1人につき228,700円、3人目以降1人につき76,200円です。

なお、子どもとは18歳になった後の最初の3月31日までの子、もしくは20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子を指します。

障害厚生年金

障害厚生年金の受給額は以下の通りです。

1級報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金(228,700円)※
2級報酬比例の年金額+配偶者の加給年金(228,700円)
3級報酬比例の年金額※
※配偶者の加給年金は65歳未満の配偶者がいるときのみ加算
※3級の最低保証額は67歳以下596,300円、68歳以上594,500円

報酬比例の年金額は、在職中の平均月収と厚生年金の加入期間をもとに、以下のように計算します。

報酬比例部分=AとBの合算金額

A:平成15年3月以前の加入期間

  平均標準報酬月額×7.125×1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数

B:平成15年4月以降の加入期間

平均標準報酬額×5.481×1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数

平均標準報酬月額は、被保険者であった期間の標準報酬月額の総額を被保険者期間の月数で割った額です。

一方、平均標準報酬額は、標準報酬月額と標準賞与額の総額を被保険者期間の月数で割った金額となります。

標準報酬月額は毎年4月~6月に支給された報酬の平均額、被保険者期間は20歳から初診日がある月の2カ月前までの期間を指します。

自身の収入額を当てはめれば、概算の受給額を計算できますが、正しい支給額を知りたい場合は、年金事務所などに確認してみましょう。

障害年金の申請方法

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高次脳機能障害の方が障害年金を申請する際は、以下の書類が必要です。

  • 年金請求書
  • 医師の診断書
  • 受診状況等証明書
  • 病歴・就労状況等申立書
  • 基礎年金番号通知書や基礎年金番号がわかる書類
  • 住民票
  • 受取先金融機関の通帳 など

年金請求書や医師の診断書、受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書の書式は自治体もしくは年金事務所で受け取れます。

診断書作成時は障がいの程度を確認するために、病院で必要な検査や測定を受けなければならない場合があるので、主治医の指示に対応しましょう。

なお、加給対象の子どもがいる場合は、子どもとの続柄を確認するために戸籍謄本や世帯全員の住民票の写しなどの提出が求められます。

書類の提出先は、障害基礎年金が自治体もしくは年金事務所、障害厚生年金が年金事務所になります。

書類を提出してから支給決定までに約3ヶ月、実際に支給されるまでにさらに約1.5ヶ月かかるので、書類作成が完了したら、速やかに提出しましょう。

障害年金以外に利用できる制度

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高次脳機能障害の方は、障害年金と合わせて以下の2つの公的制度を利用すると、経済的負担の軽減につながる可能性があります。

それぞれ対象になる場合は、申請手続きを進めましょう。

  • 自立支援医療制度
  • 障害者手帳

自立支援医療制度

自立支援医療制度は、通院による精神医療にかかる自己負担を軽減する公的制度です。

高次脳機能障害も対象となっており、医療費の1割が自己負担もしくは所得に応じて月々の上限額が設定されます。

ただし、指定された医療機関での治療費のみが対象なので、すべての病院の自己負担額が軽減するわけではない点に注意が必要です。

自立支援医療制度の自己負担額や申請方法については、以下の記事で紹介しています。

障害者手帳

高次脳機能障害の方は身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の対象になる可能性があります。

障害者手帳が交付されると、等級に応じて税金の減免や公共施設での割引などを受けられるので、経済的負担の軽減につながるでしょう。

なお、身体症状と精神症状のどちらも症状がある方は、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳の2種類を申請できる場合があります。

障害者手帳を申請するためには、初診日から6ヶ月以上経過してから医師に診断書を作成してもらうことが必要です。

交付の対象になるかわからない方は、自治体の窓口に相談してみましょう。

障害者手帳の取得後に受けられるサービスや支援内容は、以下の記事で紹介しています。

高次脳機能障害で働けないときは障害年金の受給を検討しよう

高次脳機能障害によって働けないときは、障害年金を受給できる可能性があります。

障害年金を受給するためには、初診日に公的年金に加入していたり、障害認定日に認定基準を満たしていたりするなどの受給要件を満たしている必要があります。

障害年金の申請方法や家計に不安を抱えている方は、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみましょう。

お困りの方は、お気軽にご相談ください。

監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士

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