障害があると、住宅ローンを組めないのではないかと不安に感じている方は多いのではないでしょうか。
障害のある方が住宅ローンを組む際の不安を軽減するためには、融資を受けにくくなる理由や、どのような借り入れ方法があるのかを知っておくことが大切です。
そこで今回は、障害のある方が住宅ローンを組みにくい理由と対処法を紹介します。
納得のいく形で住宅ローンを組むためにも、ぜひ参考にしてみてください。
障害のある人が住宅ローンを組みにくい理由
障害のある方は、団体信用生命保険(以下、団信)の審査に通過しにくい傾向があるため、住宅ローンを組むのが難しいとされています。
住宅ローンの契約には原則、団信の加入が必要となります。
団信とは、住宅ローンの契約者が亡くなった、あるいは高度障害状態になったときに、ローン残債を保険会社が弁済する保険のことです。
団信に加入しておけば、万が一のときでも家族が住宅ローン残債を返済することなく、そのまま住居に住み続けられるのです。
団信は一般的な生命保険と同じように、加入するための審査が実施されます。
年齢や健康状態などの告知内容から健康リスクを検討し、加入可否を判断します。
団信の審査基準は、保険会社によって異なりますが、障害のある方は他の人よりも健康リスクが高いと判断されやすく、審査に通りにくい傾向があるのです。
団体信用生命保険の審査に落ちたときの対処法
団信の審査に落ちたときは、以下の方法で住宅ローンを組めないか検討してみましょう。
- ワイド団信への加入を検討する
- フラット35で住宅ローンを組む
- 配偶者名義で住宅ローンを組む
- 告知対象期間が過ぎるのを待つ
それぞれ詳しく解説します。
ワイド団信への加入を検討する
通常の団信より審査の基準が緩和されている「ワイド団信」であれば、障害を理由に団信に加入できなかった方でも加入できる可能性があります。
ただし、加入できる病気や障害状態の基準があいまいなので、加入可否は実際に申し込んだうえで審査を受けてみるまでわかりません。
なお、ワイド団信は通常の団信より金利が高く、返済額の負担が大きくなる傾向があります。
加入年齢の上限が50歳前後で設定されている商品が多く、一般的に70歳前後が上限となっている通常の団信より条件が厳しい点にも注意が必要です。
フラット35で住宅ローンを組む
住宅ローンを組む際は、団信の加入が必須条件であることがほとんどです。
しかし、フラット35であれば、団信に加入しなくても住宅ローンを組むことができます。
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して提供する全期間固定金利型住宅ローンです。
住宅ローンには、主に以下の3つのタイプがあります。
全期間固定金利型 | 借り入れたときからずっと金利が変わらないタイプ |
変動金利型 | 返済の途中でも、金融情勢の変化に伴って定期的に金利が変動するタイプ |
固定金利期間選択型 | 選択した期間中は金利が変わらず、その期間終了後は変動金利が適用されるタイプ |
フラット35は、全期間固定金利型のみの取り扱いで、他の金利タイプを選ぶことができません。
そのため、変動金利型や固定金利期間選択型の住宅ローンを借りたい場合は、他の方法を検討した方がよいでしょう。
また、フラット35では、利用条件に住宅の広さや構造に関する基準を設けています。
なかには、フラット35の対象外となる物件もあるので、マイホームを建てたり購入したりする前に対象物件であるかを確認しておきましょう。
なお、平成29年10月1日以降にフラット35に申し込んだ場合は、団信の保険料が含まれた金額が月々の返済額となります。
団信に申し込まず借り入れた場合は、新機構団信付きのフラット35の金利から0.2%を引いた金利が適用されます。
配偶者名義で住宅ローンを組む
ワイド団信に加入できなかった方や、フラット35以外の住宅ローンを借りたい方は、配偶者名義で住宅ローンを組むのも手段の一つです。
配偶者名義で住宅ローンを借りた場合は、マイホームの所有者名義も配偶者となります。
なお、配偶者名義で住宅ローンを借りて、本人以外が返済すると、贈与に該当する可能性があります。
贈与額が一定額を超えると贈与税が加算されるので注意しましょう。
一定の収入があり、団信に加入できる配偶者がいる家庭は、この方法も検討してみましょう。
告知対象期間が過ぎるのを待つ
団信へ加入する際の告知事項は、申し込みから過去3年以内の傷病歴が対象となるのが一般的です。
そのため、告知対象期間が過ぎるのを待つことで、過去の傷病歴を告知する必要がなくなる場合があります。
この方法を使えるのは、比較的改善しやすい精神疾患のある方に限定されます。
統合失調症やうつ病などが完治してから告知対象期間が過ぎると、告知義務はなくなる場合があるため、団信に加入しやすくなるでしょう。
告知対象期間は商品によって異なるので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
障害のある人が住宅ローンを組む際のよくある質問
ここからは、障害のある方が住宅ローンを組む際のよくある質問に回答していきます。
障害者手帳を返せば団信に加入できる?
障害者手帳を返納したとしても、病気や障害の有無・状態を告知する義務がなくなるわけではありません。
告知事項から健康リスクが高いと判断されれば、障害者手帳がなくても、団信に加入することはできません。
団信で障害はないと嘘をついたらばれる?
団信に申し込むときに、障害はないと嘘をつくと、告知義務違反になるので必ず正しい内容を伝えましょう。
仮に嘘をついたまま加入できたとしても、保険金の請求手続きの際に、告知義務違反がばれるケースがあります。
請求手続きをする際に告知義務違反がばれると、保険金は受け取れなくなり、住宅ローンの残債を家族が返済することになってしまいます。
家族の生活を守るためにも、障害はないと嘘をついて団信の審査を受けるのはやめましょう。
障害があるけど住宅ローンの借り換えはできる?
住宅ローンの借り換えをするときは、団信の再加入が必要となり、借り換え先の団信の審査に落ちた場合は住宅ローンを組むことができません。
なお、審査基準が緩和されているワイド団信であれば加入できる可能性がありますが、通常の団信より金利が高くなる可能性があります。
団信が任意加入となるフラット35に申し込むのも手段の一つですが、万が一の事態に家族が住宅ローン残債を背負うこちになります。
住宅ローンの借り換えをする際は「月々の負担は軽くなるのか」「万が一のときの保障はどうするか」を検討したうえで自身に適した選択をしましょう。
障害のある人が住宅ローンを組む際はさまざまな手段を検討しよう
障害のある方は団信の審査に通過できないことで、住宅ローンを組めないケースがあります。
ただし、団信に落ちたとしても、ワイド団信やフラット35を選ぶことで融資を受けられる可能性があります。
納得のいく形で住宅ローンを組むためにも、さまざまな手段を検討してみましょう。
住宅ローンを借りる際の流れや住宅ローンの選び方に悩んでいる方は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのがおすすめです。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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