障がいや長期離職などの理由ですぐに就労ができないけれど、支援や配慮があれば働けると感じている方は多いのではないでしょうか。
就労訓練事業を利用すると、都道府県などに指定を受けた一般企業や社会福祉法人で、支援付きの就労訓練を受けられます。
しかし、生活困窮者や生活保護受給者の方のみが対象となる制度であるため、すべての人が支援を受けられるわけではありません。
適切な支援を受けるためにも、就労訓練事業がどのような制度なのかを確認しておきましょう。
そこで本記事では、就労訓練事業の対象者や利用方法、利用する際の注意点について詳しく解説します。
一般企業で就労を目指している方は、ぜひ最後までご覧ください。
就労訓練事業とは
就労訓練事業とは、障がいや長期離職などの理由で、すぐに就労できない方が就労訓練を受けられる事業のことです。
就労訓練を通して、就労に必要なスキルや知識を身につけて、一般企業への就職を目指します。
就労訓練事業では、一般就労よりも個別の配慮が受けやすく、障がい者が利用する福祉的就労よりも一般的な労働環境に近い形で働くことができます。
そのため、就労訓練事業は一般就労と福祉的就労の「中間的就労」として扱われることが多い事業です。
ここでは、就労訓練事業の対象者や利用の流れを解説します。
対象者
就労訓練事業は、生活困窮者自立支援法に基づく事業であるため、生活困窮者や生活保護受給者のみが対象です。
生活困窮者とは、さまざまな理由で経済的に困窮し、最低限度の生活を維持できなくなる可能性がある方のことを指します。
例えば、以下のような状況の方が該当します。
- 精神疾患を抱えている
- 長期間仕事をしていない
- ひきこもりである
- 生活リズムが崩れている など
これらの方の中でも、すぐに一般就労するのが難しかったり、一定の配慮や支援があれば働ける可能性があったりする方が、利用申し込みができます。
ただし、利用申し込み後は、自立相談支援機関によって就労訓練事業の対象になるかどうかが判断されます。
これらの状況に該当している方であっても、対象にならない可能性があることを認識しておきましょう。
利用の流れ
就労訓練事業を利用する際は、以下の流れで手続きを進めます。
- 自立相談支援機関もしくは福祉事務所へ相談する
- 就労訓練事業者と面談を行う
- 支援調整会議にて支援の決定を受ける
- 就労訓練事業者が就労支援プログラムを作成する
- 就労訓練が開始になる
就労訓練事業の利用を希望する際、生活困窮者は自立相談支援機関、生活保護を受給している方は福祉事務所の担当ケースワーカーに相談します。
自立相談支援機関とは、生活困窮者自立支援法に基づいて、生活に関わるさまざまな困りごとの相談に応じる専門機関のことです。
都道府県や市町村が開設しており、くらしサポートセンターや生活あんしんセンターなどさまざまな名称で設置されています。
最寄りの自立相談支援機関はこちらで確認してみましょう。
就労支援プログラムでは、利用者の意向や心身状況に応じて就労内容を決めたり、訓練期間を決めたりします。
例えば、利用者が働きたい職業に応じて介護補助や農作業、掃除といった分野を就労訓練先として定めることが可能です。
就労訓練を開始したばかりで毎日就労するのが難しい場合は、利用日数や時間を少なくした状況から始めて、徐々に増やしていくこともできます。
障がいによって集中力が保てない方はデスクワークではなく、清掃や運搬など心身の状態に合った仕事内容を選ぶのもよいでしょう。
このように、就労訓練事業は心身の状態やニーズに合わせて、段階的に就労復帰を支援する仕組みとなっています。
なお、就労訓練事業の利用期間は定められていませんが、概ね3〜6ヶ月程度が一般的です。
就労訓練の状況を見ながら、必要に応じて期間を延長したり、一般就労へ早期移行したりするケースもあります。
就労訓練事業の働き方
就労訓練事業の働き方は、非雇用型と支援付雇用型の2種類です。
どちらで働くかは、本人の意向や能力に応じて自立相談支援機関と自治体が判断します。
それぞれの形態について、詳しく解説します。
非雇用型
非雇用型は、事業主と雇用契約を結ばずに行う就労体験プログラムです。
非雇用型は仕事に慣れることを主な目的としているため、無償または低額の報酬で行われます。
利用者の状況に合わせて、勤務日数や時間を柔軟に設定できるので、無理のないペースで就労することが可能です。
就労訓練前に作成する就労支援プログラムには、支援付雇用型へステップアップするための目標を記載し、定期的に目標達成度を確認しながら支援が進められます。
目標が達成できていれば、支援付雇用型へ移行して就労訓練を継続します。
支援付雇用型
支援付雇用型は、一定の支援があれば通常の従業員と同じような勤務形態で働ける方を対象としています。
非雇用型と違い、雇用契約に基づいて就労訓練をするので、最低賃金以上の給与が保障されているのが特長です。
訓練中は、事業所にいる就労支援担当者から助言や指導を受け、職場環境への適応やスキルの向上を図れます。
支援付雇用型の目標は、最終的に一般就労へ移行することです。
そのため、勤務状況を見て安定的に働けているようであれば、一般就労への移行もすすめられます。
事業所によっては就労訓練を終えた後も、継続的に雇用してもらえるケースもあるので、就労先が早期に見つかる場合もあるでしょう。
就労訓練事業を利用する際の注意点
就労訓練事業を利用する際は、以下の2点に注意が必要です。
- 就労訓練事業が行われていない自治体がある
- 就労訓練事業所の数や種類が少ない
就労訓練事業が行われていない自治体がある
就労訓練事業は、生活困窮者自立支援制度の任意事業の一つです。
事業の有無は自治体に判断が任されているので、事業を実施していない自治体があることに注意が必要です。
自治体で就労訓練事業を行っているかどうかは、自治体の窓口やホームページで確認してみましょう。
就労訓練事業所の数や種類が少ない場合がある
就労訓練事業所として登録するかどうかは、各会社の判断によります。
そのため、就労訓練事業所の数や種類は自治体によって少ない場合もあることに注意が必要です。
例えば、清掃の就労訓練を希望していても、自治体に清掃関連の就労訓練事業所が登録されていなければ利用できません。
自治体のホームページで就労訓練事業所が公表されているので、あらかじめ確認しておくと就労訓練を受けたい分野を検討しやすくなるでしょう。
就労訓練事業を活用して長期的な就労につなげよう
就労訓練事業は、生活困窮者や生活保護受給者を対象に就労訓練が受けられる制度です。
心身の状態などに応じて、一定の配慮や支援を受けて就労訓練が受けられるので、自分のペースで一般就労を目指せます。
ただし、お住まいの自治体では就労訓練事業が行われていなかったり、希望する分野の就労訓練事業所がなかったりすることに注意が必要です。
経済的に自立するためにも、就労訓練事業を活用して一般企業への就労を目指しましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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