失語症があると復職は難しいのだろうかと不安に感じていませんか。
失語症とは、聞いたり話したりする言葉を使ったコミュニケーションが取りにくくなる障がいです。
失語症によって会話の理解が難しくなったり、うまく話せなかったりすることで、仕事をするのが難しくなってしまう可能性があります。
そのため、復職する際は自身が行える仕事を整理し、職場や専門機関からサポートを受けることが大切です。
そこで本記事では、失語症で復職するときの相談先や支援制度を紹介します。
失語症の方が復職するときに起こる課題や復職の流れも紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
失語症の方の復職率
失語症は聞く、話す、読む、書くなどの言葉を使ったコミュニケーションが難しくなる障がいです。
どれほどのコミュニケーションができるのかは、症状の程度によって異なり、仕事に大きな影響を与えることも考えられます。
2010年に失語症全国実態調査委員会が実施した「失語症全国実態調査」では、失語症がある人のうち現職復帰した方が3.4%、配置転換した方が1.5%と全体の1割にも満たない数に留まりました。
また、46.4%の方は家庭復帰(自宅退院)を選んでいることから、失語症によって復職が難しかったり、発症前の役割を維持できなかったりしていると考えられます。
しかし、発症前の仕事が難しかったとしても、復職ができないわけではありません。
自身が行える仕事を見つけたり、周りからサポートを受けたりすることで復職できる可能性はあります。
復職を希望する際は、どのような仕事ができるのかを整理し、必要なサポートを受けられるのか確認するなどの準備が大切です。
失語症で復職するときに起こる課題
失語症で復職するときの主な課題には、以下の3つが挙げられます。
- 会話の理解が難しい
- うまく話せない
- 文字の読み書きができない
会話の理解が難しい
聞く能力が低下する感覚性失語の方は、会話の理解が難しくなります。
相手の話した言葉の意味が理解できなかったり、意味の分からない音として聞こえたりするので、話しかけられてもスムーズに対応できないシーンが多くなります。
また、話すことはできても、自分で発した言葉の理解ができない場合があるので、支離滅裂なことを言ってしまうことも考えられるでしょう。
職場での口頭指示を理解できないことで、事故やトラブルが起きてしまう可能性があるので注意が必要です。
うまく話せない
話す能力が低下する運動性失語は、滑らかに話しにくいという特徴があります。
相手の言葉は理解できる一方で、話すときに言葉をスムーズに発することが難しいので、うまくコミュニケーションが取れなくなってしまいます。
言葉が出ても単語しか出なかったり、話すリズムが不安定になったりすることによって、円滑なコミュニケーションが取りにくくなる状況も考えられるでしょう。
運動性失語では、電話対応やプレゼンテーションなどの仕事の対応が難しいので、配置転換を検討してもらうのも手段の一つです。
文字の読み書きができない
失語症では、文字を読み間違う「錯読(さくどく)」や、文字を書き間違える「錯書(さくしょ)」といった症状が出る場合があります。
そのため、書類を読み間違えてしまったり、伝言メモの作成が難しかったりすることが予測されます。
契約書や発注書などの重要書類でトラブルが発生してしまうことも考えられるでしょう。
失語症の方の復職の流れ
- 自身の障がい特性や課題を整理する
- 仕事で必要な作業を習得する
- 職場に配慮してほしいことを伝える
- (可能であれば)リハビリ出勤をする
- 職場側が職場復帰の可否を判断する
失語症の方が復職する際は、できること・できないことの整理が大切です。
できない作業があれば、練習して習得したり、代替手段を検討したりする必要があります。
そのうえで職場にサポートしてほしい項目を伝えて、周囲から支援してもらえるかを相談するとよいでしょう。
なお、リハビリ出勤制度を設けている職場であれば、一定期間勤務して復職できるのかを判断することができる場合があります。
リハビリ勤務をする際は、仕事内容やサポート体制を確認しておきましょう。
ただし、リハビリ出勤制度を設けていない職場も多いので、あらかじめリハビリ出勤の可否を職場に確認しておくことが大切です。
失語症で復職に悩んだときの相談
失語症で復職に悩んだときは、職場や以下の専門機関に相談することが大切です。
- 職場
- ハローワーク
- 地域障害者職業センター
職場
失語症によって復職できるか悩んだときは、職場とよく相談することが大切です。
失語症になると、言葉や文字でのコミュニケーションが取りにくくなるので、これまで通りの仕事ができない可能性があります。
失語症の方が働き続けるためには、周囲からのサポートが欠かせないので、どのような支援が受けられるのかを職場に確認しておくことが大切です。
例えば、会話の理解が難しい場合は図や手振りを交えてもらったり、うまく話せない場合は質問カードや連絡カードなどを作成したりするなどの配慮をしてもらえるのかを確認してみましょう。
また、失語症によって元々の仕事が難しければ、配置転換や職種変更の相談をしてみるのもおすすめです。
復職が不安なときは、自身ができる仕事と職場のサポート体制をふまえて、どのようにしたら復職できるか相談するとよいでしょう。
ハローワーク
ハローワークには、障がいについて専門的な知識をもった相談員が配置されています。
復職について悩んだり、復職が難しく転職を考えたりした場合に相談に乗ってくれます。
ハローワークを利用する場合は、障がい者専用の窓口に相談するのがおすすめです。
ハローワークには、無料でサポートを受けられたり、転職活動の際は求人数が豊富であったりするなどのメリットがあります。
障がいのある方がハローワークを利用する際のメリットやデメリットは、以下の記事で紹介しています。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、各都道府県に最低1ヶ所ずつ設置されている専門的な職業リハビリ施設です。
地域障害者職業センターでは、障がいのある方が職場に適応するための支援計画を立てたうえで必要な指導を受けられます。
厚生労働省の定める研修や試験を終了した障害者職業カウンセラーが在籍しているので、より専門性の高い支援を受けられるのが嬉しいポイントです。
復職後、どのような仕事ができるのかに不安がある場合は、地域障害者職業センターに相談してみましょう。
失語症で復職の際に活用できる制度
失語症の方が復職を考える際は、以下の制度を活用できる可能性があります。
- ジョブコーチ
- 職場復帰支援プログラム
ジョブコーチ
ジョブコーチとは、障がいのある方を対象に、職場で円滑に仕事を進められるように支援するサポーターや制度のことです。
ジョブコーチでは、職場での関わり方や効率のよい作業の進め方を職場に直接訪問したサポーターからアドバイスを受けられます。
障がいのある方だけでなく、企業側にも専門的な助言をするので、症状にあった職場環境に整えやすくなります。
ジョブコーチは無料で利用できるので、復職に関する不安がある場合は、気軽に利用してみましょう。
ジョブコーチの利用方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
職場復帰支援プログラム
職場復帰支援プログラムは、障害者職業総合センターで実施されている高次脳機能障害の方のための制度で、失語症の方も支援を受けることができます。
職場復帰支援プログラムでは、仕事で起こり得る課題を整理したり、課題への対処方法を話し合ったりします。
復職前に仕事内容のシミュレーションができるので、復職に対する不安も軽減しやすくなるでしょう。
職場復帰支援プログラムを利用する際は、地域障害者職業センターへの相談が必要なので、事前に問い合わせておきましょう。
失語症になっても専門機関を活用して復職への道を探ろう
失語症の方でも、周囲のサポートを受けたり、配置転換をしたりすることで復職することが可能です。
ただし、症状の程度によっては復職が難しい場合があるので注意が必要です。
なお、復職する際は専門機関に相談することで、職場に適応するための支援を受けることができます。
不安を軽減しながら復職を目指すためにも、障がい者に特化した職業訓練ができる地域障害者職業センターなどを活用してみましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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