家族の介護が必要になったことで、会社を休職しようか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
介護休業は、家族を介護するために一定期間の休暇を取得できる制度です。
しかし、介護休業を取得するためには、介護対象となる家族や勤続年数などの要件を満たさなければなりません。
そこで本記事では、介護休業の取得要件や休業できる期間について詳しく解説します。
介護休業給付金の受給要件もまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
家族の介護を理由に「介護休業」ができる
病気やケガなどが原因で2週間以上、常時介護が必要になった家族を介護する場合、介護休業を取得できます。
ここでいう2週間以上とは、介護休業の期間ではなく、介護が必要な期間です。
例えば、要介護状態の家族が病気によって5日間の入院後に、自宅での介護が10日間となった場合は、10日間の介護休業を取得できます。
介護休業は育児・介護休業法によって、労働者の権利として認められている休暇です。
事業主は、介護休業の申出を拒否したり、休業を理由に労働者の解雇や不利益な取扱いをしたりできないよう法律で定められています。
家族の介護に専念したい場合は、介護休業の取得を検討しましょう。
ここでは、介護休業の取得要件や介護の対象となる家族などについて解説します。
取得要件
介護休業を取得するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 会社に1年以上勤務している
- 介護休業取得が可能な93日経過後、6ヶ月以上の契約が認められている
- 介護が必要になった家族が要介護状態である
これらの要件を満たしていれば、正社員だけでなくパートやアルバイトの方も取得できます。
ただし、入社から1年未満であったり、1週間の労働日数が2日以下であったりする場合は対象外となることに注意が必要です。
また、仕事と介護を両立するために設けられた制度なので、退職が決まっている人も介護休業を取得できません。
介護休業を申請する前に、自身が要件を満たしているのかを確認しておきましょう。
対象となる家族
介護休業は、介護の対象となる家族が決まっています。
対象となる家族は、以下の通りです。
- 配偶者(内縁関係を含む)
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
これらに該当しない家族の場合は、介護休業の対象になりません。
2017年以前は同居かつ扶養している祖父母や兄弟姉妹、孫を対象としていましたが、現在は法改正によって同居・扶養の要件は削除され、対象となる家族が拡大されています。
休業できる期間
介護休業は常時介護が必要な家族1人につき、最大93日間を3回まで分割して取得できます。
例えば、1回目が18日間、2回目が25日間、3回目50日間というように分けることが可能です。
分割して取得することで、退院直後のケアや体調悪化時の介護にも対応できるようになります。
体調改善までの時期や施設の入所待機期間など、状態に応じて休業する日程を決めるとよいでしょう。
なお、93日間には会社に勤務する平日だけでなく、土日や祝日といった休日も含まれます。
週末を挟んで介護休業を取得する場合は、土・日曜日も介護休業日として計算されることを認識しておきましょう。
介護休業給付金とは
介護休業給付金とは、介護休業を取得した方が一定の要件を満たした際に受給できる給付金です。
ここでは、介護休業給付金の受給要件や給付金額を解説します。
受給要件
介護休業給付金を受給するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者である
- 介護休業開始日の前2年間に11日以上就業した月が12ヶ月以上ある
- 職場復帰を予定している
介護休業を取得する前に2年間以上、一定日数を勤務していなければいけないので、入社して間もない人や勤務日数が不足している人は対象外になります。
これらの要件に加えて、介護休業中に月11日以上働いたり、休業前賃金の80%以上の収入を得たりすると受給対象から外れてしまう可能性があります。
安心して介護に専念するためにも、受給要件を満たしているかをあらかじめ確認しておきましょう。
給付金額
介護休業給付金の給付金額の計算式は、以下の通りです。
休業開始時賃金日額×支給日数×67%
休業開始時賃金日額とは、原則として介護休業前6ヶ月間の総支給額(賞与は除く)を180で割った金額です。
例えば、休業前の給与が月額30万円の場合(1ヶ月が30日として計算)は、以下のように約20.1万円/月が介護給付金として支給されます。
休業開始時賃金日額:300,000円÷30日=10,000円
10,000円×支給日数30日×67%=201,000円
ただし、介護休業中に支払われた賃金が休業開始時賃金月額の80%以上ある場合は、介護休業給付金の受給対象外となるので注意が必要です。
また、80%に満たない場合であっても、給付金額が減額される可能性があります。
休業中にも働き続ける場合は、事前にハローワークで就労要件を確認しておきましょう。
介護休業給付金の申請方法
介護休業給付金は、原則として勤務先の所在地を管轄するハローワークに事業主が申請します。
申請の流れは、以下の通りです。
- 休業する2週間前までに会社に介護休業を申請する
- 介護休業が開始となる
- 介護休業が終了後、給付金を申請する
- 支給(不支給)決定通知書が届く
- 1週間程度で介護休業給付金が支給される
介護休業は2週間前までの申請が定められていますが、会社によって申請日の規定が異なる場合があります。
会社の就業規則などを確認し、締め切り日に遅れないように注意しましょう。
なお、介護休業給付金の申請は、休業を終えてからでなければ受理されません。
休業中は給与が支払われないので、休業中の生活費をあらかじめ準備しておくことが大切です。
なお、自身で手続きしたい場合は、以下の必要書類を揃えることで申請できます。
自身で用意 | 住民票記載事項証明書 |
会社で用意 | 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 |
介護休業給付金支給申請書 | |
介護休業申出書の写し | |
介護休業期間中の出勤簿・タイムカードなど | |
介護休業期間中の賃金台帳 | |
介護休業取扱通知書 |
会社で用意が必要な書類は、会社の総務課などに作成を依頼しましょう。
介護休業給付金の申請期間は、介護休業終了日の翌日から2ヶ月後の月の末日までです。
例えば、介護休業の終了日が6月15日であれば、6月16日から8月31日の間に申請できます。
万が一、申請を忘れてしまった場合は、休業が終了した翌日から2年の時効期間内であればさかのぼって手続きすることも可能です。
2年を過ぎてしまうと、給付を受けられなくなってしまうので、早めに手続きしておきましょう。
介護のために休業するときは介護休業給付金を受給しよう
介護休業は、2週間以上にわたって介護が必要な家族を介護するために取得できる休暇です。
しかし、介護をしていれば必ず取得できるものではなく、対象となる家族が決まっていたり、入職から1年未満だと対象にならなかったりするので注意が必要です。
介護休業を取得したうえで、一定の要件を満たしていれば、介護休業給付金の対象となります。
生活費の不安を軽減して家族の介護に専念するためにも、介護休業給付金の申請を行いましょう。
介護休業給付金を受給できるか不安を感じている方は、社会保険労務士などの専門家に相談するのがおすすめです。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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