障害がある方のなかには、賃貸物件を借りられるのか不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
賃貸物件の契約は障害の有無だけで断られるとは限りませんが、障害の特性に合った物件が紹介できずに契約を断る会社もゼロではありません。
そこで今回は、障害のある人が賃貸物件の契約をするのが難しいケースやおすすめの物件の種類を紹介します。
賃貸物件を探すときの支援制度も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
障害のある人も賃貸物件を契約することは可能
障害があることで必ずしも賃貸物件を借りられないというわけではありません。
厚生労働省の「障害福祉サービスの利用実態調査 報告書」によると、単身では66.9%の人が賃貸マンション・アパート、10.2%の人が賃貸の戸建て住宅に住んでいると公表されています。
このように、障害のある人も賃貸物件を借りて住むことは可能です。
障害のある方が賃貸物件を契約するのが難しいケース
障害のある人は賃貸物件を借りられないわけではないものの、家賃滞納のリスクがあったり、障害の特性に合った物件が少なかったりすることで契約を断られる可能性があります。
ここでは、賃貸物件の契約が難しいケースを詳しく紹介します。
家賃滞納のリスクが高いと判断された
賃貸物件を契約する際は、障害の有無にかかわらず、滞りなく家賃を支払えるのかの審査を受けることとなります。
そのため、安定した収入を確保できていない場合は、賃貸契約ができない可能性があります。
一方、企業に勤めているなどで定期的な収入を見込める人であれば、契約できないケースは少なくなるでしょう。
障害の特性に合った物件が少ない
障害の特性によっては、配慮のある賃貸物件を紹介できずに契約を断られる可能性があります。
たとえば、車椅子で生活している方は、エレベーターのない物件や段差の多い物件、通路の狭い物件などで暮らすのは難しいでしょう。
バリアフリー化された物件の取り扱いが少ない不動産では、契約を断られるケースも考えられます。
障害のある人におすすめの物件の種類
障害のある人は、以下のような物件も選択肢に入れると、自分に合った賃貸物件が見つかりやすくなります。
- 公営住宅
- UR賃貸住宅
- グループホーム
それぞれ詳しく紹介します。
公営住宅
公営住宅とは、収入が少ないことを理由に住まいを見つけにくい人でも家賃を抑えて住める公的な住宅です。
公営住宅は県営住宅や市営住宅と呼ばれることもあります。
公営住宅に申し込みできるのは、一定の収入基準を超えない人です。
たとえば、江戸川区では単身の場合、年間の所得金額が1,896,000円以下でなければ申し込むことができません。
なお、身体障害者手帳1~4級の認定を受けた人であれば、基準額が緩和されて2,568,000円以下の人まで対象が広がります。
基準額や緩和の要件は、自治体によって異なるのでホームページで確認しておきましょう。
なかには、障害のある方に対して公営住宅に優先的に入居ができるように配慮している自治体もあります。
優先入居の条件や方式は自治体によって異なるので、ホームページや窓口で事前にチェックしておくのがおすすめです。
UR賃貸住宅
UR賃貸住宅とは、都市再生機構(UR都市機構)という独立行政法人が管理している賃貸住宅です。
申し込みできるのは、申込者本人の平均月収額が基準月収額以上ある場合です。
単身で申し込むときは給与収入や事業所得、不動産所得、雑所得(年金等)などの過去1年間の合計額を12で割った金額が家賃額の4倍以上でなければ、原則として申し込めません。
たとえば、家賃額5万円の住戸を借りるには、家賃額の4倍の20万円が基準額となります。
そのため、一定の収入がないと物件を借りるのが難しいといえるでしょう。
しかし、仲介手数料や礼金、更新料が不要なので、民営の賃貸住宅より金銭面の負担が少ない傾向があります。
また、UR賃貸住宅の一部の住戸では高齢者および障害のある方に向けて「高齢者等向け特別設備改善住宅」が提供されています。
具体的には、以下のような設備が施されているのが特長です。
- コンロ台を使いやすい高さに調整
- 浴室やトイレに手すりを設置
- 事前に登録した連絡先にボタン一つで通報できる連絡通報用装置を設置
高齢者等向け特別設備改善住宅に入居できるのは、身体障害者手帳の交付を受けている方といった制限があるので注意しましょう。
グループホーム
サポートを受けながら自立を目指したい場合は、グループホームを選ぶのも手段の1つです。
障害者向けのグループホームは障害福祉サービスの一部で、地域のマンションやアパート、戸建てなどで障害のある方が共同で生活できます。
入浴や食事、介助などのサポートを受けられるので、日常生活に不安を抱えていても安心して生活しやすいメリットがあります。
グループホームに住む場合は、家賃や食費、水道光熱費などを含めて月4万~6万円が相場です。
障害者向けグループホームの費用相場や入所までの流れは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
障害のある人が賃貸物件を探すときに利用できる支援制度
障害のある人が賃貸物件を探すときは、住宅セーフティネット制度や住宅入居等支援事業(居住サポート事業)の利用を検討しましょう。
最後に、障害のある人が賃貸物件を探すときに利用できる支援制度を詳しく紹介します。
住宅セーフティネット制度
高齢者や障害のある方などに対し、入居を制限する家主や不動産会社が存在するため、住宅の確保が難しい場合があります。
このような問題への対策として、国は住宅確保要配慮者の入居を拒まない民間賃貸住宅等の空き室を登録する「住宅セーフティネット制度」を創設しました。
住宅確保要配慮者とは、以下のような方々を指します。
- 低額所得者
- 被災者
- 高齢者
- 障害者
- 子育て世帯
「セーフティネット住宅情報提供システム」では、入居を拒まない住宅として登録された賃貸住宅がどこかを確認できます。
また、住宅セーフティネット制度により、賃貸住宅の入居に関する悩みがあるときは、居住支援協議会や地域の居住支援法人の窓口に相談することで住宅の紹介を受けられます。
住宅入居等支援事業(居住サポート事業)
住宅入居等支援事業(居住サポート事業)は、保証人がいないなどの理由で賃貸住宅に入居できない障害のある人に対して支援をする事業です。
具体的には不動産業者に物件のあっせんを依頼したり、入居の手続きをサポートしたりしてくれます。
住宅入居等支援事業は、自治体の福祉窓口に相談することで利用できます。
ただし、住宅入居等事業を運営していない自治体もあるので、事前に自治体のホームページで確認しておきましょう。
なお、グループホームなどで暮らしている方は対象外となるので注意が必要です。
障害のある人は支援や窓口を活用しながら入居先を探そう
障害のある人は、家賃滞納のリスクがあったり、障害の特性に合った物件が少なかったりすることで賃貸契約を断られる可能性があります。
ただ、すべてのケースで契約ができないわけではなく、物件によっては問題なく賃貸契約ができる場合があります。
スムーズに賃貸物件の契約を進めるためにも、住宅セーフティネット制度や住宅入居等支援事業(居住サポート事業)の活用を検討しましょう。
賃貸物件を借りるにあたって金銭面に不安を感じている方は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのがおすすめです。
お悩みの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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