発達障がいは、障害者手帳の対象になるのだろうかと疑問を感じていませんか。
発達障がいのある方が障害者手帳を取得すると、税金が控除されたり障害者雇用で働けたりするメリットがあります。
さまざまな支援を受けるためにも、障害者手帳の対象者や申請方法を知っておくことが大切です。
そこで本記事では、発達障がいのある方の障害者手帳を取得する方法やメリット、デメリットを解説します。
障害者手帳を取得したほうがよいのか悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
発達障がいの方も障害者手帳を取得できる
発達障がいの方は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。
精神障害者保健福祉手帳の等級は、障がいの程度によって1〜3級に分かれています。
障害等級 | 対象者 |
1級 | 日常生活全般において、ほとんどの場面で他人の援助を要する方 |
2級 | 必ずしも他人の援助が必要ではないが、日常生活を送るのが困難である方 |
3級 | 日常生活や社会生活を送れるが、ときに制限を受ける状態の方 |
発達障がいの方が精神障害者保健福祉手帳の申請をする場合、以下の条件を満たす必要があります。
- 初診日から6ヶ月以上経過している
- 発達障がいの確定診断を受けている
発達障がいの診断基準を満たさないグレーゾーンの方は、障害者手帳の対象になりません。
発達障がいの診断を受けた方は、初診日から6ヶ月以上経過後、申請手続きを進めましょう。
なお、知的障がいを伴っている場合は療育手帳の交付も受けられるので、障害者手帳を2冊取得できる場合があります。
発達障がいの方が障害者手帳を取得するメリット
発達障がいの方が障害者手帳を取得すると、以下のようなメリットがあります。
- 税金の控除や減免が受けられる
- 公共料金などの割引サービスを利用できる
- 障害者雇用枠で働ける
- 失業保険の給付期間が延びる可能性がある
税金の控除や減免が受けられる
障害者手帳を所持すると、税制面で優遇されるメリットがあります。
例えば、納税者本人や配偶者、扶養親族が障がい者である場合、以下の所得控除が受けられます。
区分 | 控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
ほかにも、住民税や相続税の控除、自動車税の減免なども対象になる場合があります。
ただし、住民税や自動車税は自治体によって異なるので、お住まいの自治体窓口などで確認しましょう。
障がい者を対象とした所得税や住民税控除の対象者や申告方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
公共料金などの割引サービスを利用できる
精神障害者保健福祉手帳を提示すると、以下の料金が割引される場合があります。
- NHK受信料
- JR、バス、タクシーなどの運賃
- 携帯電話料金
- 上下水道料金
- 公共施設の入場料金 など
ただし、対象となる等級や割引金額はサービスによって異なる場合があります。
例えば、NHK受信料の割引は精神障害者保健福祉手帳1級の方のみが対象であり、2・3級の方は対象になりません。
割引が受けられる対象者については、各サービスのホームページなどで確認しましょう。
障害者雇用枠で働ける
障害者雇用は、原則として障害者手帳を所持している方が利用できる制度です。
障害者手帳を所持している方が就労する場合は、一般雇用か障害者雇用のいずれかを選択できるので、就職先の幅が広がります。
障害者雇用で就職すると、障がいの特性に応じた配慮がなされたり、同僚からのサポートを受けられたりするなど、働きやすさを感じる可能性が高まるでしょう。
障害者雇用のメリットやデメリットは、以下の記事で詳しく紹介しています。
失業保険の給付期間が延びる場合がある
在職中に発達障がいが発覚したことで障害者手帳を取得し、それが原因で離職した方は、就職困難者と認定されます。
就職困難者が失業保険を受給する場合は、通常90日の給付日数を最大360日に延ばせるので、経済的に余裕をもった状態で転職活動に専念できます。
例えば、障害者手帳を所持していない45歳未満の方が5年働いて自己都合で退職した場合、2か月の給付制限を受けた後に、90日間の失業手当受給が可能です。
一方、在職中に発達障がいの診断を受け、障害者手帳を所持した方は給付制限がなく、さらに失業手当も300日間受給できる場合があります。
離職した場合であっても、障害者手帳を所持していれば手厚い補償を受けられるので、安心して転職活動ができるでしょう。
発達障がいの方が障害者手帳を取得する際の注意点
発達障がいの方が精神障害者保健福祉手帳を取得する際は、以下の3点に注意しましょう。
- 発行までに時間がかかる
- 診断書代がかかる
- 定期的に更新しなければならない
発行までに時間がかかる
精神障害者保健福祉手帳は、申請から発行まで2カ月程度かかる場合があります。
自治体による審査で医師に確認が必要と判断されれば、さらに期間を要する場合もあります。
税金控除や障害者雇用の利用など、精神障害者保健福祉手帳を活用する予定がある場合は、早めに申請を済ませましょう。
診断書代がかかる
精神障害者保健福祉手帳の申請には医師の診断書が必要なので、医療機関に診断書代を支払うことになります。
診断書代は医療機関によって異なりますが、3,000円〜5,000円が相場です。
なお、自治体によっては、医療機関に支払った診断書代の助成を受けられる場合もあります。
申請時の経済的負担を軽減するためにも、手帳の申請をする際は助成制度の有無を自治体に確認しておきましょう。
定期的に更新しなければならない
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は、交付日から2年が経過する月の末日までと定められています。
有効期限が切れると使用できなくなるので、2年ごとに更新手続きを行わなければなりません。
なお、更新の際も診断書が必要なので医師へ作成依頼をする必要があります。
診断書の作成には時間を要する可能性があるので、早めに手続きしておきましょう。
精神障害者保健福祉手帳を取得する流れ
精神障害者保健福祉手帳を取得する流れは、以下の通りです。
- 自治体の窓口やホームページで申請書などの書式を取得する
- 医師に診断書の作成を依頼する
- 申請書や診断書などの必要書類を担当窓口に提出する
- 精神保健福祉センターの審査によって等級が決まり次第、手帳が交付される
自治体によって申請書の書式が異なるので、窓口やホームページで取得する必要があります。
また、多くの自治体では申請の際、本人の顔写真や個人番号確認書類が必要です。
申請から手帳の交付までに、約2ヶ月期間を要することを踏まえて、早めに準備しておきましょう。
発達障がいがある方は精神障害者保健福祉手帳の取得を検討しよう
発達障がいがある方は、初診日から6ヶ月以上経過すると、精神障害者保健福祉手帳を取得できます。
ただし、障がいの診断基準に満たないグレーゾーンの方は、障害者手帳の対象外です。
診断がついた場合は、医師に精神障害者保健福祉手帳の診断書の作成を依頼しましょう。
なお、精神障害者保健福祉手帳は、発行までに時間がかかったり、2年ごとに更新が必要だったりすることを認識しておく必要があります。
障害者控除や割引サービスへの活用など、障害者手帳の利用を予定している場合は、早めに申請しておきましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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