がんの診断を受けた方のなかには「介護保険サービスを利用できるのか」「どのような手続きをすればよいのか」といった疑問をもっている方もいるのではないでしょうか。
介護保険サービスを利用すれば、訪問介護や福祉用具貸与などの支援を受けられるので、日常生活が送りやすくなります。
ただし、がん患者の方は年齢によって申請条件が異なるため、自身が対象となるかを確認しておくことが大切です。
そこで本記事では、がんで介護保険サービスを利用できる対象者やサービス内容、申請の流れを解説します。
介護保険サービスによる支援を受けたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

がんで介護保険サービスを利用できる対象者

がん患者で介護保険サービスを利用できるのは、以下のいずれかに当てはまる方です。
- 65歳以上の第1号被保険者
- 40歳~64歳未満の第2号被保険者で「がんの末期」と診断された方
65歳以上の第1号被保険者は、がんの程度に関わらず要介護認定の申請ができます。
一方、40〜64歳未満の第2号被保険者は、がんの末期と診断された場合のみ申請可能です。
がんの末期とは、治癒を目指す治療が効かなくなり、治る見込みがない状態のことを指します。
医師が「がん末期」であると判断した場合、介護保険の対象となります。
がん患者が利用できる介護保険サービス

がん患者が利用できる主な介護保険サービスは、以下の4つです。
- 訪問サービス
- 通所・短期入所サービス
- 福祉用具貸与
- 住宅改修
それぞれ詳しく解説します。
訪問サービス
訪問サービスとは、ヘルパーや看護師などの専門スタッフが自宅を訪問して支援を行うサービスのことです。
訪問サービスで利用できる主なサービスと支援内容は、以下のとおりです。
| サービスの種類 | 支援内容 |
| 訪問介護 | ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴介助や家事支援を行う |
| 訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、主治医の指示のもと医療的ケアや健康管理を行う |
| 訪問リハビリテーション | 理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、身体機能維持・改善のためのリハビリテーションを行う |
| 訪問入浴介護 | 専用浴槽を自宅に持ち込んで入浴介護をする |
治療による体力低下で家事が困難になったときは訪問介護、痛みの緩和や点滴などの医療処置が必要な場合には訪問看護が有効となります。
また、現在の体力や身体機能を維持するためには訪問リハビリテーション、体力低下によって自宅の浴槽で入浴するのが難しい場合は訪問入浴介護を利用できます。
通所・短期入所サービス
通所・短期入所サービスは、施設に通ったり短期間入所したりして利用するサービスです。
がん患者が利用できる主な通所・短期入所サービスは、以下の4つです。
| サービスの種類 | 支援内容 |
| 通所介護(デイサービス) | 日中施設に通って、入浴や食事、レクリエーションなどの支援を受ける |
| 通所リハビリテーション(デイケア) | 日中施設に通って、歩行訓練などリハビリ中心のサービスを受ける |
| 短期入所生活介護(ショートステイ) | 施設に短期間宿泊して生活全般の介護を受ける |
| 短期入所療養介護(医療型ショートステイ) | 介護老人保健施設や介護医療院に短期間入所して、医学的管理のもと生活全般の介護を受ける |
これらのサービスは、一時的に自宅から離れて過ごすため、家族の介護負担軽減につながります。
通所リハビリテーションや短期入所療養介護は、医師や看護師が配置されているので、体調が変化したときに対応してもらいやすくなります。
福祉用具貸与
福祉用具貸与とは、車椅子や介護用ベッドなどの福祉用具をレンタルできる介護保険サービスです。
福祉用具貸与の対象品は、以下のとおりです。
- 手すり
- スロープ
- 歩行器
- 車椅子
- 特殊寝台(介護用ベッド)
- 移動用リフト
- 床ずれ防止用具 など
体重減少によって就寝時に腰やおしりが痛い場合は床ずれ防止用具、骨転移などで歩行が難しい場合は車椅子を利用するなど、身体状況に合わせてレンタルできます。
なお、車椅子や介護用ベッドは、原則として要介護2以上の認定が必要です。
しかし、がん末期と診断されていれば、要介護1や要支援でもレンタルできる場合があるため、ケアマネジャーに相談してみましょう。
福祉用具貸与を利用する流れは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
住宅改修
介護保険による住宅改修では、工事費の一部が給付されます。
住宅改修の対象となるのは、以下のような工事です。
- 段差の解消
- 引き戸などへの扉の取り替え
- 手すりの取り付け など
工事費の上限は20万円で、自己負担割合(1〜3割)を除いた分が給付されます。
例えば、1割負担の方は自己負担2万円で20万円分の工事が可能です。
身体状況が変化して生活に支障が出たときは、住宅改修を利用して住環境を整えましょう。
介護保険サービスの費用

介護保険サービスの自己負担額は、原則として支払った介護費用の1割ですが、一定以上の所得がある方は2割もしくは3割になります。
自己負担割合は、要介護・要支援の認定を受けている方全員に交付される「介護保険負担割合証」で確認できます。
1ヶ月に利用できるサービスの上限額は、以下のとおりです。
| 要介護度 | 支給限度額 |
| 要支援1 | 50,320円 |
| 要支援2 | 105,310円 |
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
例えば、要介護2で1割負担の場合、月額約19,700円までの自己負担でサービスを利用できます。
限度額を超えた分は全額自己負担となることを認識しておきましょう。
がん患者が介護保険サービスを利用する流れ

がん患者が介護保険を申請する流れは、以下のとおりです。
- 自治体の窓口で要支援・要介護の認定申請をする
- 認定調査を受ける
- 要支援・要介護の認定を受ける
- ケアプランを作成する
- サービスの利用を開始する
1つずつ詳しく解説します。
1.自治体の窓口で要支援・要介護の認定申請をする
介護保険サービスを利用するには、自治体の窓口で要支援・要介護認定の申請が必要です。
要支援・要介護認定とは、その人がどれほどの介護を必要となるかを判定することをいいます。
本人や家族が申請できますが、手続きが不安な場合は地域包括支援センターやケアマネジャーに代行を依頼することもできます。
申請する際は、介護保険被保険者証(40~64歳未満の方は健康保険被保険者証)を持参しましょう。
2.認定調査を受ける
申請から約10日後に認定調査員が自宅を訪問し、心身状況を確認するための認定調査が行われます。
入院中の場合は、病院に調査員が訪問したりオンラインで調査したりすることがあります。
主治医の意見書も必要となりますが、自治体と医療機関で直接やり取りされるため、申請者が手続きをする必要はありません。
3.要介護・要支援の認定を受ける
認定調査と主治医意見書の内容をもとに審査され、要介護度が決まります。
認定審査の結果は「要介護1〜5」「要支援1、2」「非該当」の8段階のいずれかです。
原則として、申請日から30日以内に認定通知書と介護保険被保険者証が自宅に届きます。
ただし、自治体によってはさらに日数がかかる場合があります。
4.ケアプランを作成する
介護保険サービスを利用するためには、ケアプラン(介護サービス計画)の作成が必要です。
要支援1もしくは2の認定を受けた方は、地域包括支援センターにケアプラン作成を依頼します。
要介護1~5の方は、地域にある居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)に依頼します。
どの居宅介護支援事業所に依頼すればよいかわからないときは、自治体の窓口や入院中の病院の医療ソーシャルワーカーに相談しましょう。
5.サービスの利用を開始する
ケアプラン作成後に、介護保険サービスが利用できるようになります。
なお、がん患者は身体状況が急変する可能性があるため、認定結果が出る前に暫定的にサービスを利用できることがあります。
申請後すぐに介護保険サービスを利用したいときや住環境を整えたいときは、ケアマネジャーに相談しましょう。
がん患者が介護保険を申請する際のよくある質問

最後に、がんの診断を受けた方が介護保険を申請する際のよくある質問に回答します。
がんの診断を受けたらすぐに申請すべき?
がんの告知を受けたからといって、必ずしもすぐに申請する必要はありません。
介護が必要な状態でなければ、申請しても認定を受けられない可能性があります。
介護保険の申請タイミングは、日常生活で困りごとがあるかどうかを基準に判断することが大切です。
例えば、歩行に介助が必要になったり、ベッドから起き上がるのに時間がかかったりするなど、身体状況に変化がある場合は申請しましょう。
申請から認定を受けるまでに1ヶ月以上かかる場合があるため、困りごとが増えてきたら早めに申請することをおすすめします。
要介護認定を受けられなかった場合はどうすればいい?
要介護認定を受けられなくても、身体状況が変化した場合は再度申請できます。
がん患者は身体状況が変わりやすいため、再申請することで認定を受けられる可能性があります。
がん診断を受けたら必要な介護保険サービスを活用しよう
がんの診断を受けた場合、介護保険サービスを利用できる可能性があります。
65歳以上の方はがんの程度に関わらず申請でき、40〜64歳未満の方はがん末期と診断された場合に申請可能です。
がん患者の方が介護保険サービスを利用すると、家族の介護負担を軽減できたり、住環境を整えたりすることができます。
ただし、介護保険は申請から認定まで時間がかかるため、身体状況に変化を感じたら早めに申請することが大切です。
必要な支援を受けるためにも、介護保険サービスを積極的に活用しましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士




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