就労移行支援の利用を検討している方のなかには「通所中の生活費が心配」「失業保険をもらいながら通えるのか」といった疑問をもっている方も多いのではないでしょうか。
就労移行支援を利用している方も、受給要件を満たせば失業保険を受給することが可能です。
失業保険の受給によって経済的な不安が軽減できれば、就職に向けた訓練に専念できます。
そこで本記事では、就労移行支援の利用者が失業保険を受給するための要件や受給額、申請の流れを解説します。
失業保険以外に活用できる支援制度についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

就労移行支援の利用中も失業保険を受給できる

就労移行支援に通いながら失業保険を受け取ることは、制度上認められています。
失業保険を受給することで、利用中の生活費に対する不安を軽減しながら、就職に向けた訓練に専念することが可能です。
まずは、失業保険の受給要件と受給額、受給期間を解説します。
受給要件
失業保険の受給要件は、以下のとおりです。
- 現在失業状態である
- 働く意思と能力がある
- 原則として、離職前の2年間に雇用保険の加入期間が通算12ヶ月以上ある
(倒産や解雇、または疾病や障がいなど正当な理由のある自己都合により離職した場合は、離職前の1年間に加入期間が6ヶ月以上)
働く意思と能力がある状態は、フルタイムで働けることのみを指すわけではありません。
障がいに配慮した職場環境や条件で就労できるのであれば、受給要件を満たしていると判断されます。
就労移行支援を利用して就労に向けた訓練を受けることは、働く意思と能力がある状態を示す具体的な活動といえます。
受給額
失業保険で1日に受け取れる金額は「基本手当日額」と呼ばれ、離職前の給与額に基づいて計算されます。
まずは以下の式に当てはめて、1日あたりの平均賃金である「賃金日額」を求めましょう。
賃金日額=離職前6ヶ月に支払われた給与総額(賞与を除く)÷180
算出した賃金日額をもとに、実際に支給される基本手当日額を計算します。
基本手当日額=賃金日額×給付率50~80%(60~64歳は45〜80%)
給付率は賃金日額によって異なり、離職前の給与が少なかった人ほど給付率が高くなります。
また、基本手当日額には年齢ごとに上限額と下限額が定められています。
総支給額は、基本手当日額に自身の所定給付日数をかけた金額です。
より正確な金額や日数を知りたい場合は、ハローワークで交付される雇用保険受給資格者証を確認してみましょう。
受給期間
失業保険の基本手当の所定給付日数は、雇用保険の被保険者期間に応じて以下のように定められています。
| 雇用保険の被保険者期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
| 給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
失業保険の手続きの際に障害者手帳を所持していた場合は「就職困難者」と認定され、さらに受給日数が延長される可能性があります。
就職困難者の受給日数は、以下のとおりです。
離職時の年齢 | 雇用保険の被保険者期間 | |
| 1年未満 | 1年以上 | |
| 45歳未満 | 150日 | 300日 |
| 45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
雇用保険の被保険者期間が1年以上ある方であれば、最長で360日の給付を受けられます。
厚生労働省の調査では、就労移行支援の平均利用期間は15.9ヶ月(平成29年度)となっています。
そのため、訓練期間から就職開始までの多くの期間を失業保険によってカバーできるのは大きなメリットといえるでしょう。
就労移行支援の利用者が失業保険を受給する流れ

就労移行支援の利用者が失業保険を受給する流れは、以下のとおりです。
- ハローワークで求職申し込みを行い、離職票を提出する
- 雇用保険受給者初回説明会に参加する
- 失業認定日に「失業認定申告書」を提出して認定を受ける
- 指定口座へ失業保険が振り込まれる
就労移行支援を利用している場合は、初回手続きの際にその旨をハローワークの窓口で伝えておきましょう。
就労支援事業所は国の認可を受けた機関であるため、通所中の職業相談などは「求職活動実績」として認められます。
適切に状況を伝えておくことで、失業認定申告書の記載方法や、求職活動実績の扱いについてアドバイスを受けられます。
なお、病気の状態が理由ですぐに就職活動ができない場合は、受給期限の延長が可能です。
通常、失業保険の有効期限は退職日の翌日から1年間ですが、延長手続きをすることで最大4年間まで延ばせます。
体調に不安があり、長期間働けないときは、早めに受給延長の手続きをしておきましょう。
失業保険以外で就労移行支援利用中の生活費を補う制度

就労移行支援利用中の生活費が足りないときは、失業保険以外にも以下の制度が利用できます。
- 生活福祉資金貸付制度
- 障害年金
- 生活保護
それぞれ詳しく解説します。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、失業や減収などによって生活が困窮している障がい者や低所得世帯に対し、必要資金の貸付を行う制度です。
就労移行支援を利用している方は、以下の貸付を受けられる可能性があります。
| 貸付金の種類 | 概要 | 貸付限度額 | 貸付期間 | |
| 総合支援資金 | 生活支援費 | 生活を立て直すために必要な生活費の貸付 | 単身世帯:月15万円以内2人以上世帯:月20万円以内 | 原則3ヶ月(最長12ヶ月まで) |
| 住宅入居費 | 住宅の賃貸契約を結ぶ際に必要な経費の貸付(敷金や礼金など) | 40万円以内 | ー | |
| 一時生活再建費 | 生活を立て直すために必要な費用の貸付(就職に向けたスキル習得の必要経費など) | 60万円以内 | ー | |
| 福祉資金 | 福祉費 | 療養に必要な経費やサービスを利用するための経費の貸付 | 580万円以内 | ー |
| 緊急小口資金 | 緊急かつ一時的に生活費が不足した場合の貸付 | 10万円以内 | ー | |
あくまで「貸付」であり、返済の見通しが立たないと判断されると審査が通らない可能性があるため、注意が必要です。
貸付を受ける際は、お住まいの地域の社会福祉協議会に相談してみましょう。
生活福祉資金貸付制度の利用方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

障害年金
障害年金は、公的年金の加入者が病気やケガによって、仕事または日常生活に一定以上の制限を受けた際に支給される年金です。
障害年金は失業保険と併給することが可能です。
障がいの原因である病気の初診日に、国民年金に加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の受給対象となります。
障害年金の受給要件は、以下のとおりです。
- 初診日に公的年金に加入している
- 障害認定日に障害年金を受給できる障害等級に該当する
- 20歳から初診日の前々月までの期間で保険料納付済み期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上ある
(初診日が令和18年3月末日までの場合、初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい)
障害年金は申請から支給決定までに約3ヶ月、初回振込までにさらに約1.5ヶ月かかる場合があります。
また、医師の診断書の作成に時間がかかることもあるので、早めに手続きすることをおすすめします。
自身の受給資格の有無がわからない場合は、最寄りの年金事務所や年金相談センターに相談してみましょう。
生活保護
失業保険などの制度を利用しても生活費を補えないときは、生活保護の申請を検討しましょう。
収入が最低限度の生活費に達していなかったり、資産が一定額以下であったりする場合は、生活保護の対象となる可能性があります。
ただし、生活保護の審査は世帯単位で行われるため、同居家族に十分な収入がある場合は対象外となってしまうことに注意が必要です。
生活保護を申請したい場合は、お住まいの地域の生活保護担当窓口に相談してみましょう。
就労移行支援の利用中は失業保険の受給を検討しよう
就労移行支援を利用中の方も、失業保険の支給要件を満たせば受給できます。
特に、ハローワークで就職困難者と認定されれば給付期間が延長され、訓練期間の経済的な不安を軽減できる可能性があります。
生活費を確保しながら就労を目指すためには、自身が受給対象になるかを確認し、早めにハローワークで手続きを行うことが大切です。
また、失業保険以外にも、生活福祉資金貸付制度や障害年金などの助成制度を活用できる可能性があります。
生活費の支払いに悩んでいる方は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもおすすめです。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士




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