就労移行支援は工賃(給与)をもらえる?利用中に生活費を補う制度を解説

福祉制度
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就労移行支援を利用しているときに収入が得られるのか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、就労移行支援では原則として工賃や給与は支払われません。

しかし、一定要件に該当すれば、生活費を補う制度を利用できる可能性があります。

就労移行支援を利用時の金銭的な不安を軽減するためにも、活用できる制度を知っておくことが大切です。

そこで本記事では、就労移行支援で工賃や給与がもらえない理由や利用中に生活費を補う制度を解説します。

生活費に対する不安を減らして、一般就労に向けた訓練に専念したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

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就労移行支援は工賃をもらえないのが一般的

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就労移行支援では、原則として工賃や給与を受け取ることができません。

その理由は、就労移行支援が収入を得る場所ではなく、一般就労に向けたトレーニングを受けるための場所だからです。

就労移行支援の主な目的は、ビジネスマナーやパソコンスキルの習得、履歴書の添削など一般就労に向けての訓練です。

そのため、利用者は「労働者」ではなく「訓練を受ける利用者」という立場になります。

一部の事業所では、企業からの委託業務や自主事業による生産活動の収益に応じて、工賃が支払われることがあります。 

ただ、この工賃は生産活動で得られた成果に対して支払われるものなので、月1〜2万円程度に留まることがほとんどです。

また、就労移行支援に通所している期間は、原則としてアルバイトが認められていません。

就労移行支援の利用中の生活費を確保するためには、あらかじめ収入を補う方法を考えておくことが大切です。

就労移行支援の利用中の生活費を補う制度

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就労移行支援の利用中は、以下の制度を利用すると生活費を補える可能性があります。

  • 生活福祉資金貸付制度
  • 失業保険(雇用保険の基本手当)
  • 障害年金
  • 生活保護

どのような支援を受けられるか見ていきましょう。

生活福祉資金貸付制度 

生活福祉資金貸付制度とは、障害のある方や低所得の方などが生活の必要資金を一時的に借りられる公的制度です。

失業などによって生活に困窮している場合は、生活福祉資金貸付制度のなかの総合支援資金が受け取れます

総合支援資金では、保証人がいれば無金利で資金を借りられます。

総合支援資金は3種類に分けられ、それぞれの貸付限度額や貸付期間は以下の通りです。

概要貸付限度額貸付期間
生活支援費生活を立て直すために必要な生活費の貸付単身世帯:月15万円以内
2人以上の世帯:月20万円以内
原則3ヶ月にわたって貸付を受けられる
(最長12ヶ月まで)
住宅入居費住宅の賃貸契約を結ぶ際に必要な経費の貸付
(敷金や礼金など)
40万円以内
一時生活再建費生活を立て直すために一時的に必要な費用の貸付
(就職に向けたスキル習得の必要経費など)
60万円以内

最後の貸付日から6ヶ月以内に返済を開始し、かつ10年以内に完済すればよいため、無理のないペースで返済できます。 

なお、あくまでも「貸付」であるため、多額の負債を抱えているなどで返済するのが難しいと判断されると生活福祉資金貸付制度の対象外となるので注意しましょう。

生活福祉資金貸付制度の申し込みは、最寄りの社会福祉協議会で行えます。 

申請から貸し付けまでは一般的に約1ヶ月かかるので、すぐに生活費が必要な方は速やかに手続きをしましょう。 

失業保険(雇用保険の基本手当)

失業保険(雇用保険の基本手当)とは、雇用保険に加入している方が失業状態となった際に受け取れる給付金のことをいいます。

失業保険で給付されるのは、離職前の6ヶ月間における賃金日額(賞与を除く6ヶ月分の給与の合計÷180)の45〜80%です。 

障害を理由に退職した場合に以下の要件をすべて満たすと「特定理由離職者」に認定され、一般の離職者に比べて受給日数が延長される場合があります。 

  • ハローワークへ求職申し込みを行っている
  • 働く意思と能力はあるが就職できない状態である
  • 退職前の1年間に雇用保険の加入期間が6か月以上ある 

特定理由離職者の受給日数は、以下の通りです。

    雇用保険の被保険者期間 
1年未満1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
離職時の年齢30歳未満    90日90日120日180日
30歳以上35歳未満     120日180日210日240日
35歳以上45歳未満150日240日270日
45歳以上60歳未満180日240日270日330日
60歳以上65歳未満150日180日210日240日

本来であれば自己都合での離職は、失業保険の給付を受けられるのは7日間の待期期間を経てさらに2ヶ月後です。

特定理由離職者はこの2ヶ月の給付制限がないので、失業保険の給付が早く受けられるメリットがあります。

また、失業保険の手続きの際に障害者手帳を所持していた場合は、就職困難者と認定される可能性があります。

就職困難者とは、身体障害や知的障害、精神障害によって現時点での就職は難しいとハローワークが判断した人のことです。

就職困難者の方の受給日数は、以下の通りです。

被保険者期間
1年未満1年以上
離職時の年齢45歳未満150日300日
45歳以上65歳未満150日360日

就労移行支援の平均的な利用期間は15.9ヶ月(平成29年度)のため、就職困難者と認定された場合、雇用保険の被保険者期間が1年以上ある方であれば就労移行支援の利用から就労開始までの多くの期間をカバーできます。

失業保険の受給対象となる場合は、お住まいの住所を管轄するハローワークで手続きをしましょう。

障害年金

障害年金は、病気やケガによって生活・仕事に制限を受ける方が一定要件を満たした際に受給できる年金です。

以下の障害の状態に該当すると、障害年金を受給できる可能性があります。

等級状態 
1級他者の介助を受けなければ日常生活のほとんどのことができない状態
2級・活動範囲が病院や家の中に限定され、日常生活の一部に他者の介助を必要とする
・労働によって収入を得ることが難しい
3級障害によって労働に制限を受ける、もしくは職場の理解やサポートがあれば就労ができる状態
参考:国民年金・厚生年金保険障害認定基準

障害年金には、障害基礎年金(1〜3級)と障害厚生年金(1・2級)の2種類があり、それぞれ受給対象者が異なります。

原則として国民年金の被保険者は障害基礎年金、厚生年金の被保険者は障害基礎年金・障害厚生年金の対象です。

厚生年金の被保険者で障害等級が1級または2級に該当すると、障害基礎年金と障害基礎年金の両方を受け取れます。

ただし、初診日の前々月までのすべての被保険者期間のうち、保険料を納付したり、免除を受けたりした期間があわせて3分の2以上なければ受給対象外となります。

加えて、障害年金は原則として初診日から1年6ヶ月経過した時点で一定の障害があることが要件となります。

そのため、初診日から1年6ヶ月未満の方や、障害年金の基準を満たさない心身状況の方は、受給対象外となるので注意が必要です。

自身が受給対象になるのかわからない場合は管轄の年金事務所や年金相談センターに相談しましょう。

生活保護

失業保険や障害年金などの制度を利用したうえで生活費が足りない場合は、生活保護の受給を検討しましょう。

ただし、生活保護は世帯収入によって支給されない場合があるので、自身の収入が少なくても家族に十分な収入がある場合は支給対象にならないことに注意が必要です。 

生活保護の手続きは、自治体の生活保護課などに相談しましょう。

収入を得ながら就労訓練ができる制度・支援

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収入を得ながら就労訓練をしたい方は、以下の制度や支援の利用を検討してみましょう。

  • 職業訓練(ハロートレーニング)
  • 就労継続支援

それぞれ詳しく見ていきましょう。

職業訓練(ハロートレーニング)

職業訓練とは、就職に役立つ知識やスキルを身に付けられる公的制度で、ハロートレーニングとも呼ばれています。

障害のある人が受けられる職業訓練は、以下の通りです。

訓練の名称対象者
離職者訓練失業保険の受給資格をもつ求職中の方
障害者訓練 失業保険の受給資格があり求職中かつ障害がある方
求職者支援訓練失業保険の受給対象外で求職中の方

離職者訓練と障害者訓練は、一定要件を満たすことで失業保険を受給しながら訓練を受けられます。

加えて、訓練の受講手当として日額500円の支給を受けることもできます(上限日数は40日分)。

求職者支援訓練は、失業期間が長かったり、雇用保険に加入していなかったりする方が対象です。

求職者支援訓練の対象者が一定の要件を満たすと、訓練期間中に月10万円の職業訓練受講手当の支給を受けられます。 

職業訓練は比較的短期間で仕事に活かせる資格や知識を身に付けやすいため、可能な限り早くスキルを習得して就職先を見つけたい方におすすめです。

職業訓練の支給要件や手続き方法については、厚生労働省のサイトで確認してみましょう。

就労継続支援

就労継続支援とは、障害があることで一般就労に不安がある方が一定の支援を受けながら就労できる障害福祉サービスです。

無理のない範囲で働いて収入を確保したい方は、就労継続支援を利用するのも手段の一つです。

就労継続支援はA型・B型の2種類あり、対象者や平均賃金が以下のように異なります。

就労継続支援A型就労継続支援B型
対象者原則18歳以上65歳未満年齢制限なし
雇用契約ありなし
平均賃金
(令和4年度)
月額:83,551円
時間額:947円
月額:17,031円
時間額:243円

体調などの問題で一般就労が厳しい方は、就労継続支援を利用して自分のペースで働くのがよいでしょう。

一方、一般企業での就労を目指している方は、就労移行支援の利用が向いています。

体調や就労に対する希望に応じて、自分に合った方法を選択しましょう。

就労継続支援のサービス内容は、以下の記事で詳しく紹介しています。

生活費を補う制度を活用しながら就労移行支援を利用しよう

就労移行支援を利用する際は、あらかじめ生活費を補う方法を検討しておくことが大切です。

生活福祉資金貸付制度や失業保険などの受給要件に該当すれば、一定期間の生活費を確保しながら就労移行支援を利用できる可能性があります。

経済的な不安を軽減するためにも、どの制度が利用できるかを事前に確認しておきましょう。

なお、生活費の支払いに困っている場合は、ファイナンシャルプランナーへの相談もおすすめです。

お困りの方は、お気軽にご相談ください。

監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士

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