ユニット型特養とは、全室が個室で構成され、少人数のユニットに分かれて介護を受けられる特別養護老人ホームです。
ユニット型特養では、入所者のプライバシーを守りながらも、共用スペースで他の入所者やスタッフと交流できる環境が整えられています。
しかし、従来型特養に比べると費用が高かったり、人間関係でトラブルが起きると居心地が悪くなる場合があったりするので注意が必要です。
入所後に想像と違ったと後悔しないためにも、メリットだけでなくデメリットも把握したうえで入所を決めましょう。
本記事では、ユニット型特養で受けられるケアや従来型特養との違い、メリット・デメリットを解説します。
ユニット型特養でどのようなケアを受けられるのか知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

ユニット型特養とは

ユニット型特養とは、少人数のグループごとに介護をする「ユニットケア」が受けられる特別養護老人ホームのことです。
10名前後の小規模なグループをユニットと呼び、それぞれのユニットに専属の介護スタッフが配置されます。
ユニット型特養は比較的新しいスタイルなので、新型特養とも呼ばれています。
ここでは、ユニット型特養の入所条件や受けられるケアを見ていきましょう。
入居条件
ユニット型特養の入居条件は、以下の通りです。
- 原則として要介護3以上の方
- 要介護1~2で特例によって入居が認められている方
これらの入所条件は、従来型特養と同じです。
要介護1〜2の場合、認知症で日常生活が困難だったり家族による介護が難しかったりするケースであれば、特例として入所が認められる可能性があります。
入所の対象になるかわからない方は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
受けられるケア
ユニット型特養では、以下のようなケアが受けられます。
- 食事介助
- 清掃・洗濯
- 排泄、入浴介助
- レクリエーション
- 機能訓練 など
ユニット型特養では、入所者の生活リズムに合わせたケアが受けられます。
「朝はゆっくり起きたい」「朝食は遅めに食べたい」といった希望があれば、可能な範囲で柔軟に対応してくれます。
また、本人が希望する生活リズムに近づけられるよう、スタッフ間で情報共有したうえで、ニーズに合わせたケアを実施します。
ユニットケアは小規模であるため、介護スタッフが入所者の症状や生活背景を把握しやすく、一人ひとりに合った介護を受けやすいのが特長です。
ユニット型特養でかかる費用

ユニット型特養に入所した際にかかる費用は、以下の通りです。
- 介護保険サービス費
- 食費
- 居住費
- 日常生活費
介護保険サービス費は要介護度によって異なり、原則として1割は自己負担(所得によって2〜3割)となります。
例えば、介護保険サービス費の地域区分単価が10円の地域における1ヶ月の費用は、以下の通りです。
項目 | 費用目安 |
介護保険サービス費 | 月額約25,000~28,000円 |
食費 | 日額1,445円×30日=月額43,350円 |
居住費 | 日額2,066円×30日=月額61,980円 |
日常生活費 | 約5,000円 |
合計 | 約135,000円 |
なお、地域区分単価や居住費は自治体によって異なるので、これらの金額はあくまで目安となります。
詳しい金額は、お住まいの自治体や施設に確認しましょう。
また、住民税非課税世帯の方が「特定入所者介護サービス費制度」を利用すると、居住費や食費の自己負担額を下表のように軽減できる可能性があります。
対象者 | 居住費(日額) | 食費(日額) | |
第1段階 | 生活保護受給者もしくは世帯全員が老齢福祉年金受給者 | 880円 | 300円 |
第2段階 | 世帯全員の年金収入を含む所得が80万円以下 | 880円 | 390円 |
第3段階(1) | 世帯全員の年金収入を含む所得が80万円超120万円以下 | 1,370円 | 650円 |
第3段階(2) | 世帯全員の年金収入を含む所得が120万円超 | 1,370円 | 1,360円 |
ただし、対象となるためには、預貯金額が一定額以下などの条件もあります。
特定入所者介護サービス費制度の条件については、以下の記事で詳しく紹介しています。

ユニット型特養と従来型特養の違い

ユニット型特養と従来型特養には居室やスタッフ配置、費用などに違いがあります。
それぞれの違いは、以下の通りです。
ユニット型特養 | 従来型特養 | |
居室 | 個室 | 多床室(2~4名) |
スタッフ配置 | ユニットごとに専任スタッフが配置される | 介護スタッフがフロアすべての入所者の対応をする |
費用 | 約6万円~13.5万円/月 | 約3.5万円~10万円/月 |
特長 | ・個別ケアに特化している ・利用者や職員との交流が多い | ・集団的なケアが多い ・ユニット型に比べて費用が抑えられる |
ユニット型特養では、個室が共有スペースを囲むように配置されており、少人数のグループで過ごします。
各ユニットに担当の介護スタッフがいるので、一人ひとりに合わせたケアを受けやすいのがメリットです。
一方、従来型特養は多床室であり、2〜4名の入所者が一部屋を共有します。
各スペースはカーテンで仕切られており、病院に近い雰囲気です。
ユニット型特養と比較して、3万円ほど安い価格で入居できます。
プライベートな空間を大切にしたい方や家庭的な雰囲気で過ごしたい方はユニット型特養、なるべく費用を抑えたい方は従来型特養が適しているでしょう。
ユニット型特養のメリット

ユニット型特養には、以下の3つのメリットがあります。
- 個別ケアが受けられる
- 介護スタッフと関係構築がしやすい
- プライベートが確保されやすい
個別ケアが受けられる
少人数のグループで生活するユニット型特養では、介護スタッフが入所者一人ひとりの体調やニーズをより詳しく把握できます。
そのため、食事や入浴、排泄といった日常生活のあらゆる場面で、入所者の生活リズムや好みに合わせたケアが受けられます。
また、数人の介護スタッフがフロア全体を対応する従来型特養に比べて、ユニット型特養はスタッフ配置が充実しているのも特長です。
例えば、ユニット型特養では昼間に各ユニットに1人以上のスタッフ、夜間に2ユニットごとに1人以上のスタッフを配置することが介護保険法で定められています
常にスタッフが配置されているので、急な体調変化や要望にも柔軟に対応してもらいやすいでしょう。
介護スタッフと関係構築がしやすい
ユニット型特養では、専任の介護スタッフと関わる時間が多くなります。
介護スタッフとコミュニケーションをとる時間が長くなるほど、入所者の変化に気付いてもらいやすかったり、良好な関係を築きやすかったりするでしょう。
特に認知症の方は、介護スタッフと顔なじみになることで不安や混乱を軽減しやすくなります。
介護スタッフと良好な関係を築くことができれば、安心して過ごしやすくなるでしょう。
プライベートが確保されやすい
ユニット型特養は、すべての入所者が個室で生活できるので、プライベートな空間が確保されています。
自宅で使用していた愛用品などを持ち込める場合もあり、自分の好みに合わせた快適な空間をつくれます。
また、家族が面会に訪れたときは、他の入所者に気を使わずにゆっくり過ごすことが可能です。
プライベートな空間があることによって、リラックスした状態で家族と面会しやすくなるでしょう。
ユニット型特養のデメリット

ユニット型特養のデメリットは、以下の2点です。
- 従来型に比べて費用が高い
- 人間関係でトラブルが起きると居心地が悪くなる場合がある
従来型に比べて費用が高い
ユニット型特養は従来型特養と比較して、月3〜4万円程度高くなる場合があります。
実際の費用は、所得や要介護度によって異なりますが、月々の支払いを抑えたい方にはユニット型特養は適していない可能性があります。
ただし、ユニット型特養はあくまでも公的施設なので入所一時金はありません。
そのため、基本的には有料老人ホームなどの民間施設に比べると月々の費用は抑えやすい傾向があります。
経済的な不安を軽減するためにも、毎月かかる費用について地域包括支援センターなどで確認しておきましょう。
人間関係のトラブルで居心地が悪くなる場合がある
小規模なユニットで過ごすと、入所者同士や介護スタッフとの関係が固定されやすくなります。
関係構築がしやすい一方で、トラブルが発生した場合の逃げ場が少なく、居心地の悪さを感じる可能性があります。
トラブルが起きたときは、ユニット変更などの対応を受けられるように施設スタッフに相談してみましょう。
ユニット型特養の特徴を知って自分に合うケアを受けよう
ユニット型特養とは、全室個室で少人数のユニットに分かれて生活する介護施設です。
入所者一人ひとりの生活リズムに合わせた個別ケアを受けられたり、プライベートが確保されて自分のペースで過ごせたりするメリットがあります。
ただし、従来型特養に比べて利用料金が高い傾向があるので、事前にしっかりと確認することが大切です。
どれくらいの利用料金がかかるのか知りたい場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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