在宅介護をしている介護者が、一時的な休息をとるために支援を受けられるレスパイトケアをご存じでしょうか。
レスパイトケアは、介護者の息抜きのために介護保険サービスなどを利用して介護から離れる時間をつくるサービスです。
在宅介護に長期間関わっている介護者は、肉体的にも精神的にも大きな負担を感じることが少なくありません。
要介護者と介護者の共倒れを防ぐためにも、レスパイトケアを定期的に利用して、お互いにリフレッシュすることが大切です。
そこで本記事では、レスパイトケアを受けられる施設や費用を解説します。
長く在宅介護を続けていきたいと考えている介護者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
レスパイトケアとは
レスパイトとは、英語で「小休止」や「息抜き」を意味する言葉です。
在宅介護をしている介護者が、一時的に介護から離れ、休息を取るために支援を受けることをレスパイトケアといいます。
レスパイトケアには、介護疲れによる介護者の体調不良や虐待を防止したりする目的があります。
介護者がリフレッシュする時間を設けることで疲れを癒やし、無理のない在宅介護を継続することにつながるのです。
さまざまな施設でケアを受けられますが、利用日数は利用するサービスによって1日〜1ヶ月と異なります。
レスパイトケアを受けられるサービス
レスパイトケアを受けたいときは、以下のサービスを利用するのがおすすめです。
- デイサービス
- ショートステイ
- レスパイト入院
それぞれのサービス内容について紹介します。
デイサービス
デイサービスは、一定の時間介護施設に通って、身体介護や機能訓練を受ける介護保険サービスです。
本人が通所している間に、介護者の用事を済ませたり休息を取ったりできます。
レクリエーションや機能訓練などのプログラムが設けられているので、要介護者がよい刺激を受けられることも大きなメリットです。
また、利用時間を延長したり、そのまま宿泊できたりするデイサービスもあるので、介護者の休息に合わせて利用先を決めるのがおすすめです。
通い慣れた通所先で宿泊できれば、要介護者の不安も生じにくく、心理的な負担を軽減できるでしょう。
ショートステイ
ショートステイは、介護施設に短期間宿泊してケアを受ける介護保険サービスです。
夜間も含めて利用できるので、より介護者のリフレッシュにつながりやすくなります。
介護者の体調不良や冠婚葬祭といったときに宿泊できるので、十分な介護ができないときにも頼れるサービスとなるでしょう。
なお、ショートステイは1泊から利用できますが、連続利用日数は30日までと定められています。
要介護度や施設の空室状況によっては、さらに利用日数が短くなる可能性もあります。
利用できる日数を確認したい場合は、担当のケアマネジャーやショートステイ先に確認するとよいでしょう。
レスパイト入院
レスパイト入院とは、介護者のレスパイト目的で要介護者が医療機関に入院するサービスです。
医師や看護師が在籍しているため、たん吸引や酸素管理など医療的ケアが必要な方も利用できます。
入院日数は医療機関によって異なりますが、原則14日以内が目安です。
なお、レスパイト入院は地域包括ケア病棟を有する医療機関で行われていることが多く、対応していない医療機関もあることに注意が必要です。
レスパイト入院について聞きたい場合は、担当のケアマネジャーや医療機関に在籍する医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。
レスパイトケアにかかる費用
レスパイトケアの利用費用は、サービス内容によって異なります。
施設 | 費用 |
デイサービス | 1,000円~2,000円/回※ |
ショートステイ | 4,000円~10,000円/日※ |
レスパイト入院 | 高額療養費の区分によって異なる |
デイサービスやショートステイの費用は、要介護度や自己負担割合によって異なります。
実際の費用を確認したい場合は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
レスパイト入院は、高額療養費が適用となるので、所得に応じて医療費の限度額が異なります。
高額療養費は1ヶ月ごとに上限額が定められているので、月をまたいで入院すると費用が高くなる可能性があることに注意が必要です。
レスパイト入院の日程を決める際は、同月内で入退院ができるようにすると金額が抑えやすくなります。
なお、個室代や食事代は自己負担になることをあらかじめ認識しておきましょう。
レスパイトケアのメリット
レスパイトケアのメリットは以下の2つです。
- 介護疲れを軽減できる
- 専門職から助言を受けられる
介護疲れを軽減できる
レスパイトケアは、介護から一時的に離れて、介護疲れを軽減できる点が大きなメリットです。
常時介護に向き合っていると、心身ともに疲弊してしまうことが多く、ストレスを強く感じやすくなってしまいます。
介護者側が積極的に休息を取ったり、リフレッシュの時間を設けたりすると、より質の高い在宅介護を継続しやすくなるでしょう。
専門職から助言を受けられる
レスパイトケアでは、介護や医療の専門職による支援が受けられます。
そのため、日々の介護方法などで悩んでいることがあれば、適切なアドバイスをもらえるので、介護方法に不安を感じている人にもおすすめです。
例えば、車椅子への移乗や歩行時の介助など、本人の身体状況の変化に伴って介護者側の介護技術が必要になるケースもあります。
また、認知症の方への声掛けの方法などに悩む場合もあるでしょう。
レスパイトケアを活用して専門職から助言をもらうと、在宅介護の負担軽減にもつながる可能性があります。
レスパイトケアの注意点
レスパイトケアの注意点は以下の2つです。
- 環境変化により心身状態が悪化する可能性がある
- あらかじめ予約が必要である
環境変化により心身状態が悪化する可能性がある
レスパイトケアでは、普段とは違う環境で過ごすことになるため、要介護者が受ける刺激が大きくなってしまう場合があります。
環境の変化によって不安や混乱を感じると、心身状態の悪化につながる可能性があるので注意が必要です。
特に変化に敏感な認知症の方は、環境に適応するのに時間がかかってしまいます。
落ち着きがなく興奮してしまったり、急に攻撃的になったりすることも考えられます。
心身状態の悪化を最小限にするためには、レスパイトケアの目的を要介護者に説明し、同意を得ることが大切です。
日常的にデイサービスやショートステイを利用しているのであれば、なるべく同じ施設を利用し続けることも不安や混乱を最小限に抑えることにつながります。
あらかじめ予約をする必要がある
レスパイトケアは、基本的に急な利用はできないので、あらかじめ予約をする必要があります。
レスパイトケアを利用したいときは、事前に担当ケアマネジャーへ相談するようにしましょう。
施設の空き状況によっては、レスパイトケアの利用ができない可能性もあります。
希望日に利用するためにも、なるべく早めに相談しておくことが大切です。
レスパイトケアは要介護者と介護者を守ることにつながる
レスパイトケアは、要介護者と介護者の心身を安定させ、生活を守ってくれるサービスなので、利用するのは決して悪いことではありません。
介護者が気分をリフレッシュできれば、要介護者に対してさらに優しく接することができます。
専門家にアドバイスを受けることができれば、介護の質も上がりやすく、介護環境が変わることで要介護者にもよい刺激になるでしょう。
ただし、要介護者が不安や混乱を感じることによって心身状態の悪化につながる可能性もあるので注意が必要です。
レスパイトケアを利用する際は、要介護者にも目的を丁寧に説明し、理解を得られてから利用するようにしましょう。
レスパイトケアを活用して介護負担を軽減しよう
レスパイトケアは、介護者が休息を取れるよう支援を受けられるサービスです。
定期的に利用すると、介護者が介護疲れから一時的に解放され、気分のリフレッシュにつながります。
在宅介護を長く続けるためにも、デイサービスやショートステイ、レスパイト入院から要介護者に合った施設を選んで利用しましょう。
レスパイトケアの利用方法やどの施設を選んだらよいかわからない場合は、担当のケアマネジャーに相談することが大切です。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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