就労継続支援B型の工賃(給与)が安いことで、生活が苦しいと悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
就労継続支援B型は最低賃金が適用されないなどの理由により、工賃が安い傾向にあります。
工賃以外にも交通費がかかったり、利用料金が必要だったりするため、毎月の収入がさらに少なくなる方もいるでしょう。
そこで本記事では、就労継続支援B型の工賃が安い理由と生活が苦しいときの対策方法を解説します。
就労継続支援B型を利用していて、工賃が安いと悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
就労継続支援B型の工賃(給与)
就労継続支援B型では、生産活動(仕事)の利益から経費を引いた金額が、工賃として支払われます。
厚生労働省の調査によると、令和3年度の平均工賃額は16,507円/月、時給に換算すると233円です。
事業所により時給制や日給制、月給制など支給方法が異なりますが、1人で生活していける収入を得るのは難しいといえるでしょう。
就労継続支援B型の工賃が安い理由
就労継続支援B型の工賃が安い理由は、以下の3つが挙げられます。
- 雇用契約を結ばないため
- 利用者が取り組みやすい作業に限定しているため
- 収益性が低いため
雇用契約を結ばないため
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに就労に向けて必要な訓練を受けられる障害福祉サービスです。
雇用契約とは、雇用主が従業員の労働に対して報酬を支払う契約のことで、労働基準法に則った待遇が受けられます。
雇用契約を結ばない就労継続支援B型では、労働基準法上の「労働者」に該当しないため、自治体で定められる最低賃金が適用されません。
そのため、最低賃金を下回ることが多く、工賃が安くなる傾向があります。
利用者が取り組みやすい作業に限定しているため
就労継続支援B型で行う生産活動は、利用者が取り組みやすい以下のような作業に限定しています。
- シート折り
- 袋詰め
- 商品の検品 など
就労継続支援B型は、年齢や体力低下、障がいなどによって一般企業での就職が難しい方を対象とした制度です。
長時間労働や毎日の出勤が難しい利用者が多いため、仕事内容が軽作業に限定されてしまいます。
身体の状態や体調に合わせて自分のペースで働けるメリットがある一方で、工賃が低くなってしまう傾向があります。
就労継続支援B型は収入を得ることよりも、就労が難しい方の日中活動や訓練の場としての役割が大きいといえるでしょう。
収益性が低いため
就労継続支援B型の生産活動の多くは、外部業者から作業を受託しています。
受託した生産活動は、作業単価が低く設定されていることが多いため、収益性が低くなることで工賃を上げにくくなってしまいます。
そのような事態を改善するために、下請けではなくオリジナル製品を制作・販売するなど、収益が出やすい作業に取り組む事業所もあります。
通所先を選ぶ際には、どのような生産活動をしているのかも確認してから決めるのもよいでしょう。
就労継続支援B型を利用するときの注意点
就労継続支援B型を利用するときの注意点は、以下の通りです。
- アルバイトとの併用は原則できない
- 利用料金がかかる
アルバイトとの併用は原則できない
就労継続支援B型は、一般企業での勤務が難しい方を対象にしているため、原則としてアルバイトとの併用が禁止されています。
短時間のアルバイトであっても、一般就労できる能力があると見なされ、就労継続支援B型の対象者に該当しないと考えられるためです。
就労継続支援B型を利用している方は、工賃以外で収入を得ることは難しいといえるでしょう。
利用料金がかかる
就労継続支援B型を利用する際は、利用料金の原則1割が自己負担となります。
利用料金は事業所によって異なり、利用した日数分がかかるので、どれほどの負担になるのかを確認しておくことが大切です。
なお、すべての利用料金が自己負担になるわけではなく、前年度の世帯収入によって以下の負担上限月額が決められています。
世帯の収入状況(前年度) | 負担上限月額 |
生活保護世帯 | 0円 |
低所得(市民税非課税世帯) | 0円 |
一般1(市民税課税世帯 所得割16万未満) | 9,300円 |
一般2(上記以外) | 37,200円 |
これらの料金に加えて、昼食代や交通費が別途かかる場合があります。
昼食代が高かったり、遠方の事業所に通ったりすると、月々の収支がマイナスになってしまう可能性もあるので、利用前にどれほどの費用がかかるのかを確認しておくことが大切です。
就労継続支援B型と併用できる制度
就労継続支援B型の工賃で生活できないときは、以下の制度を利用することを検討しましょう。
- 失業等給付
- 生活福祉資金
- 障害年金
- 生活保護
失業等給付
障がいによって再就職が難しいと判断された失業者は「特定理由離職者」と呼ばれ、就労継続支援B型に通いながら、失業保険(雇用保険の基本手当)や教育訓練給付などの失業等給付を受けられる可能性があります。
特定理由離職者が失業等給付を受給できる要件は、以下の通りです。
- 就職する意思や能力はあるが失業の状態にある
- 離職日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上ある
給付額は、収入によって減額される場合がありますが、就労継続支援B型の工賃であれば減額される可能性は低いです。
給付要件に該当する方は、最寄りのハローワークに相談してみましょう。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、障がいのある方や低所得の方などに対し、生活に必要な資金を一時的に貸し付ける制度です。
資金の貸し付けを通して経済的自立や社会促進を図り、安定した生活を送れるようにすることが目的です。
無金利または低金利で借りられるうえに、経済的自立に向けて相談対応や指導などを受けられます。
生活福祉資金貸付制度の利用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
障害年金
障害年金は、公的年金の加入者が障がいや病気で働けなくなった場合に支給される年金です。
国民年金の加入者は障害基礎年金、厚生年金の加入者は障害厚生年金の対象となります。
障害基礎年金は1,2級、障害厚生年金は1〜3級の方が受給でき、さらにその範囲に満たない障がいが残った場合は障害手当金が支給される可能性があります。
障害基礎年金は自治体もしくは年金事務所、障害厚生年金は年金事務所が申請の窓口です。
準備書類が多いので、事前に担当窓口に確認しておきましょう。
生活保護
これらの制度を利用しても生活費が足りない場合は、生活保護の申請を検討しましょう。
就労継続支援B型を利用している場合でも、最低限の生活費に達していないのであれば、生活保護を受給できる可能性があります。
なお、生活保護は世帯収入によって支給の可否が判断されるので、家族に十分な収入がある場合は支給対象にならないことに注意が必要です。
生活保護の受給について相談したい場合は、自治体にある生活保護課などに相談しましょう。
就労継続支援B型の工賃で生活できないときは公的制度を利用しよう
就労継続支援B型は、雇用契約を結んでいなかったり、利用者が取り組みやすい軽作業に限定していたりすることで、工賃が安くなっている傾向があります。
就労継続支援B型では、原則としてアルバイトとの併用が認められていないので、1人で生活していく収入を確保するのは現実的に難しいといえます。
就労継続支援B型の工賃で生活できないときは、公的制度の利用を検討してみましょう。
利用できる制度があれば、就労継続支援B型の工賃と合わせて生活費を確保できる可能性があります。
生活費の捻出に悩んでいる方は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもおすすめです。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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