日中一時支援とは、障がいのある方に日中活動の場を提供し、その間に介護している家族が仕事や一時的な休息を取ることができるサービスです。
日中一時支援を利用することで、介護をしている方が安心して仕事に専念できたり、息抜きができたりするメリットがあります。
介護者が一時的な休息を取ることは、在宅介護の負担軽減につながります。
長く在宅介護を続けていくためにも、介護から離れて心身をリフレッシュする時間を持ち、介護疲れを防ぐことが大切です。
本記事では、日中一時支援のサービス内容や費用、利用方法について解説します。
放課後等デイサービスとの違いも解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

日中一時支援とは

日中一時支援とは、障がいのある方が一時的に施設に通い、日常生活全般の介助を受けるサービスです。
家族が旅行や出産などで一時的に介護ができなかったり、休息を必要としたりする場合に利用できます。
このサービスは国の任意事業として位置づけられていますが、令和3年時点で約8割の自治体が日中一時支援を実施しています。
この高い実施率から、多くの自治体が、障がいのある方や介護者を支えるために欠かせないサービスと捉えているのがわかるでしょう。
ここでは、日中一時支援の対象者やサービス内容を解説します。
対象者
日中一時支援の対象者は、原則として65歳未満かつ以下の障がいがある方です。
- 身体障がい者・児
- 知的障がい者・児
- 精神障がい者・児
- 難病の方
65歳以上の方など介護保険の対象となる場合は、介護保険サービスの利用が優先になります。
さらに、自治体によっては障がいの種類や年齢を制限していたり、障害者手帳の所持を条件としていたりする場合があるので注意が必要です。
自分が対象になるのかわからない場合は「〇〇(お住まいの自治体) 日中一時支援」で検索してみましょう。
サービス内容
日中一時支援では、以下のような支援が受けられます。
- 日常生活全般の介護
- 健康管理
- 社会適応のための訓練 など
日中一時支援では、これらの基本的なケア以外の支援内容は細かく決められていません。
これは、日中一時支援が障がいのある方に安全な居場所を提供し、家族の介護負担を軽減することを目的としているためです。
そのため、基本的に提供される支援は生活に必要なケアに限定され、療育などの専門的なサポートは受けられません。
ただし、事業所によっては、機能訓練を受けられたり、レクリエーション活動に参加できたりする場合があります。
どのような支援が受けられるのかを確認したい場合は、事業所を見学したり問い合わせたりするとよいでしょう。
日中一時支援の費用

日中一時支援の費用は、自治体によって異なります。
なかには、障害程度区分や利用時間に応じて金額を定めている自治体もあります。
そのため、具体的な費用については、自治体の窓口や利用する事業所に確認することが大切です。
なお、一部の自治体では利用者の負担軽減を図るため、障がい福祉サービスの利用者負担上限額と同様の基準を日中一時支援にも適用しています。
障がい福祉サービスの負担上限額は、以下の通りです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※ | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(20歳未満かつ市町村民税所得割28万円未満の方) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」
これらの費用以外にも、食費がかかります。
食費は事業所によって異なるので、あらかじめ確認することが大切です。
日中一時支援の利用方法

日中一時支援を利用する流れは、以下の通りです。
- 自治体の障害福祉課などの窓口に申請する
- 利用決定通知書の交付を受ける
- 日中一時支援事業所と契約する
- 利用開始となる
申請時には、以下の書類が必要です。
- 日中一時支援利用申請書
- 世帯の収入状況がわかる書類
これらの書類は自治体の窓口に準備されているので、あらかじめ準備しておくと、スムーズに手続きを進められます。
日中一時支援の費用は収入状況によって異なるので、正しく申告することが大切です。
申請後、自治体の職員が本人や介護者から障がいの状況や必要な支援について聞き取り調査を行う場合があります。
この調査をもとに利用日数や利用者負担上限月額が決定し、利用決定通知書に記載されます。
申請から支給決定までに、1ヶ月〜1ヶ月半程度かかる場合があるので、早めにサービスを利用したい場合は、速やかに自治体の窓口へ申請しましょう。
日中一時支援と放課後等デイサービスの違い

日中一時支援と似たサービスに、放課後等デイサービスがあります。
2つのサービスの違いは、以下の通りです。
日中一時支援 | 放課後等デイサービス | |
利用年齢 | 1歳~64歳(自治体によって異なる) | 原則として6~18歳の就学している児童 |
利用できる時間帯 | 日中、夜間など家族の都合に合わせて利用できる(事業所によって異なる) | 放課後や長期休暇期間 |
利用期間 | 一時的に利用する | 継続的に利用する |
役割 | ・家族のレスパイトケア ・家族の就労支援 | ・子どもの療育 ・放課後の居場所 ・家族のレスパイトケア |
サービス内容 | 決まりはなく、自由度が高い | 個別支援計画に沿って支援を受ける |
日中一時支援は、家族の休息や就労支援といった一時的なニーズに対応しています。
一方、放課後等デイサービスは週2日通うといったように、継続的な支援が受けられるのが特徴です。
また、利用時間の柔軟性が高い日中一時支援は、家族のニーズに合わせて利用しやすいメリットがあります。
事業所が営業していれば夜間も利用できるので、家族の長時間の外出などにも対応可能な場合があります。
一時的に障がいがある方の居場所を確保したい方は日中一時支援、子どもの療育を目的として継続的に通所したい方は放課後等デイサービスが向いているでしょう。
なお、日中一時支援と放課後等デイサービスは併用できる場合があります。
自治体や事業所によって併用ができるかの判断が異なるので、事前に自治体の窓口に確認しておきましょう。
日中一時支援を利用する際の注意点

日中一時支援を利用する際の注意点は、以下の2つです。
- 利用日数が決まっている
- 他のサービスが優先となる場合がある
利用日数が決まっている
日中一時支援には、自治体ごとに定められた利用日数の上限があります。
そのため、利用を希望するすべての日程で利用できない可能性があることに注意が必要です。
また、日中一時支援の利用目的が介護者の休息か就労かによって、利用できる日数が異なる自治体もあります。
一般的には、就労目的での利用の方が、より多くの日数を利用できる傾向にあります。
なお、やむを得ない事情があるときは、上限日数を超えて利用できる場合があるので、状況に応じて相談してみましょう。
他のサービス利用が優先になる場合がある
日中一時支援は、他の公的なサービスで同様の支援が受けられない場合に利用できるサービスです。
そのため、介護保険サービスや障害福祉サービスで類似の支援が受けられる場合は、それらのサービスが優先されます。
例えば、介護保険の対象者の場合、日中一時支援の代わりにデイサービスなどの利用を勧められます。
同様に、障がいのある未就学児の場合は児童発達支援、就学児の場合は放課後等デイサービスの利用を勧められる場合があるでしょう。
これらのサービスは、日中一時支援とは利用の手続きや費用負担の仕組みが異なります。
どのサービスが利用できるのかわからなかったり、手続き方法に悩んだりする場合は、自治体の窓口や相談支援事業所などに相談してみましょう。
児童発達支援などの障害児通所支援のサービス内容は、以下の記事で紹介しています。
日中一時支援を利用して介護負担を軽減しよう
日中一時支援は、障がいのある方に安全な居場所を提供し、日常的に介護を行う家族の負担を軽減するサービスです。
このサービスを利用することにより、介護者は定期的に休息を取り、心身をリフレッシュする機会を得られるメリットがあります。
日中一時支援の事業所は、支援内容やサービスを提供できる時間などが異なるので、家族のニーズに合った事業所を選ぶことが大切です。
在宅介護を長く続けていくためにも、日中一時支援の利用を検討してみましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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