生活保護を受給しながら施設に入所できるのか疑問を感じていませんか。
生活保護を受給している状況であっても「救護施設」に入所すれば、日常生活全般のケアが受けられます。
ただし、入所するためには福祉事務所に相談のうえ、保護実施機関による承認を得なければなりません。
そこで本記事では、救護施設の入所要件や支援内容、入所までの流れを詳しく解説します。
障害者グループホームとの違いも解説しているので、どの施設に入所したらよいのかわからないと悩んでいる方も、ぜひ最後までご覧ください。
救護施設とは
救護施設は生活保護法に基づいた施設で、日常生活全般のケアを必要とする方が入所できる施設のことです。
障がいの種類や程度に関わらず、支援を必要とする方を幅広く受け入れていることから、地域におけるセーフティーネットとして機能しています。
ここでは、入所要件や支援内容を解説します。
入所要件
救護施設に入所できるのは、以下の条件を満たす方です。
- 原則として生活保護を受給している方
- 身体、知的、精神障がいがある方または依存症やホームレスなど複合的な課題がある方
救護施設の大きな特徴は、障がいの種類や程度を問わず入所できることです。
障害者手帳といった障がいを証明するものがなくても、支援が必要と認められれば入所対象になります。
また、入所要件に年齢制限はないものの、18歳未満の方は児童福祉法、65歳以上の方は介護保険法に基づいた施設への入所を勧められる場合があります。
なかには、年齢要件を設けている施設もあるので、事前に確認しておくことが大切です。
救護施設は原則として生活保護受給者を対象としていますが、生活保護を受給していない方の自費入所を認めている場合もあります。
入所を検討する際は自費入所の可否も含めて、施設ごとの条件をあらかじめ確認しておきましょう。
支援内容
救護施設では、以下のような支援が受けられます。
日常生活支援 | ・健康管理 ・相談援助 ・日常生活全般の介護 など |
リハビリテーション | ・身体機能訓練 ・日常生活動作や生活習慣の訓練 など |
自己実現の支援 | ・就労訓練 ・作業活動 ・趣味・学習活動 など |
地域生活の支援※ | ・保護施設通所事業 ・一時入所事業 ・居宅生活訓練事業 など |
救護施設では、一人ひとりの状況に合わせて作成される個別支援計画をもとに支援を受けられます。
例えば、将来的に一人暮らしを希望している方には、料理や掃除など、日常生活に必要なことを習得するための訓練が可能です。
退所後には、保護施設通所事業や一時入所事業を利用することで、定期的に施設へ通ったり一時的に入所したりすることもできます。
ただし、地域生活の支援は任意事業であるため、すべての施設で実施されているわけではありません。
地域で安心して生活を始めるためにも、退所時にどのような支援が受けられるかを事前に確認しておくことが大切です。
救護施設の費用
救護施設は生活保護を受給している方を対象としているので、基本的に入所費用はすべて生活保護費でまかなわれます。
しかし、障害年金などの収入がある方は、生活費や事務費として支払いが必要です。
なお、入所中は月に一度、個人使用のためのお小遣いの支給を受けられる施設が多くあります。
金額は施設によって異なりますが、生活保護の障害者加算の金額に基づいて決められる場合もあります。
どれくらいの金額なのかを確認しておくと、入所後の生活がイメージしやすくなるので、入所相談時に確認しておくとよいでしょう。
障害者加算については、以下の記事で詳しく紹介しています。
救護施設に入所する流れ
救護施設に入所する流れは、以下の通りです。
- 自治体の福祉事務所(生活保護課)に相談する
- 都道府県知事や市長などの保護実施機関が入所可否を判断する
- 入所施設が決まったら見学し、入所申込みをする
- 入所判定会議後、入所する
救護施設の入所相談は、福祉事務所が担当しているので、まずは相談してみましょう。
入所が必要と判断されれば、保護実施機関が施設の空き状況などを考慮して入所施設を指定します。
入所施設は、基本的に自身で選べないことを認識しておきましょう。
救護施設と障害者グループホームの違い
障がいがある方の生活を支援する施設には、障害者グループホームもあります。
救護施設と障害者グループホームを選択するときは、それぞれの違いを知っておきましょう。
救護施設とグループホームの主な違いは、以下の3つです。
救護施設 | 障害者グループホーム | |
入所要件 | ・原則として生活保護を受給している方 ・障がいや依存症などの複合的な課題がある方 | ・障害支援区分の認定を受けている方 ・施設によって障がいの種類が決められている場合がある |
入所相談の窓口 | 福祉事務所 | 自治体の障害福祉課や相談支援事業所 |
サービス提供時間 | 昼夜問わない | 主に夜間 |
救護施設は障がいの種類や程度を問わず入所できますが、グループホームは原則として障害支援区分の認定を受けなければ入所できません。
障害支援区分とは、障がいのある方の心身状態によって6段階に分けられている区分のことです。
なかには、知的障がいや精神障がいがある方といった独自の条件を定めている施設もあります。
これらのことから支援を必要とする方を幅広く受け入れているのが救護施設、特定の障害支援区分や障がい種別に応じた支援を提供しているのが障害者グループホームといえるでしょう。
また、入所者の一日の過ごし方にも違いがあります。
救護施設の入所者は、一日中施設の中で過ごすのが一般的ですが、グループホームでは主に夜間に支援を受けることとなります。
グループホームの入居者が日中に支援を受けない理由には、就労支援事業などの活動をしている方が多いためです。
救護施設とグループホームで迷ったときは、これらのポイントを比較しながら、自身の状況に合った施設を選びましょう。
障害者グループホームの費用内訳や入所までの流れについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
救護施設のよくある質問
最後に、救護施設のよくある質問に答えていきます。
生活保護じゃなくても入所できる?
救護施設は、生活保護を受給していない方も入所できる場合があります。
自費入所を認めている施設もあるので、まずは救護施設に確認してみましょう。
生活保護を受けていない場合は、施設での生活費や事務費を自費で支払う必要があるので注意が必要です。
身寄りがなくても入所できる?
身寄りがない方でも救護施設に入所できるケースが多いです。
家族がいる場合は、緊急時の連絡先や身元引受人として家族に依頼されることがあります。
どれくらいの期間入所できる?
救護施設の入所期間は、基本的には定められていません。
2018年度に厚生労働省が行った調査では、救護施設の平均入所期間は6年7ヶ月となっています。
この結果から見ても、短期間で退所を促されることは少ないといえるでしょう。
ただし、救護施設には支援を必要とする方をいつでも受け入れられるようにしたり、入所者の自立を支援したりする役割もあります。
そのため、入居者の心身状態が改善され、地域で自立生活ができると判断された場合は、退所を勧められる場合があります。
日常生活に不安を感じたら救護施設の入所を検討しよう
救護施設とは、原則として生活保護を受給している方が、日常生活の支援を受けながら生活する施設のことです。
障害者手帳や障害程度区分がなくても、支援が必要な方であれば、入所相談ができます。
日常生活に不安を感じていて、支援を受けながら生活したいと考えている方は、福祉事務所のケースワーカーに入所の相談をしてみましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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