障害のある方のなかには、費用を抑えながら希望の職種に就くためのスキルや資格を身に付けたいと考えている方がいるのではないでしょうか。
障害のある人は、職業訓練を活用することで失業保険を受け取りながらスキルや資格を取得できます。
障害のある人が受けられる職業訓練にはさまざまな種類があるため、対象者や受講できるコースの違いを把握したうえで自分に合ったものを選ぶことが大切です。
そこで今回は、障害のある人が受けられる職業訓練を紹介します。
代表的な受講コースや職業訓練を受けるための手続きの流れも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
障害のある人が受けられる職業訓練一覧
職業訓練とは、就職に役立つ知識やスキルを身に付けられる公的制度で、ハロートレーニングとも呼ばれています。
障害のある人が受けられる職業訓練には、以下のようなものがあります。
- 離職者訓練
- 障害者訓練
- 求職者支援訓練
それぞれの特徴や対象者を詳しく紹介します。
離職者訓練
離職者訓練は、障害の有無にかかわらず、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給資格のある求職者を対象としています。
離職者訓練では、以下のようなコースがあります。
- 電気設備技術科
- 生産設備メンテナンス科
- 工場管理技術科
- 介護サービス科
- 医療事務科
- ICTエンジニア科 など
訓練期間は主に3~6ヶ月程度ですが、2年ほどかかるコースもあります。
障害者訓練
障害者訓練の対象者は、失業保険の受給資格のある求職者のなかで、障害者手帳をもっている人や医師の診断書や意見書などで障害のあることが証明できる人です。
障害者訓練には、以下のような訓練コースがあります。
訓練コース | 内容 |
知識・技能習得訓練コース | 就職に必要な知識・技能の習得を目指す |
実践能力習得訓練コース | 企業などの現場で実践的な職業能力の向上を目指す |
e-ラーニングコース | 通所困難者などを対象にIT技能の習得を目指す |
特別支援学校早期訓練コース | 特別支援学校などに在籍し、内定を得られなかった生徒を対象に職業能力の向上を目指す |
在職者訓練コース | 雇用継続につながる知識・技能の習得を目指す |
訓練期間は原則3ヶ月以内とされており、離職者訓練より短い傾向があります。
求職者支援訓練
離職者訓練と障害者訓練は、失業保険の受給資格のある人が対象ですが、求職者支援訓練は失業保険を受給できない求職者でも受けられます。
例えば、以下のような人が対象となります。
- 失業期間の長い人
- 雇用保険に加入していなかった人
- 失業保険受給中に再就職できなかった人
- 学校卒業後に就職しないまま求職している人
- 自営業をやめて就職を目指す人 など
なお、求職者支援訓練の対象者が一定の要件を満たすと、10万円の給付金(職業訓練受講給付金)を受け取れます。
求職者支援訓練には、基本的に以下のような基礎コースと実践コースがあります。
コース名 | 内容 |
基礎コース | ・会社で働くための基礎スキルを2~4ヶ月かけて習得する ・パソコンの操作やワードでの文章作成、エクセルでの表計算、ビジネスマナーなどを学ぶ |
実践コース | ・高度な専門知識や実践スキルを3~6ヶ月かけて習得する ・介護サービス科、医療事務科、Webデザイナー科、Webアプリプログラム科、建築CAD科などのコースがある |
職業訓練を受けるまでの流れ
職業訓練を受けるまでの基本的な流れは、以下の通りです。
- ハローワークに相談する
- 受講申し込みをする
- 面接や筆記試験を受ける
- 選考結果通知を受け取る
- 職業訓練を受講する
どの職業訓練を受けたらいいのか悩んでいる方は、ハローワークのスタッフに取得したい資格やスキル、就きたい仕事が何かを伝えて、適切なコースを一緒に探してもらいましょう。
また、ハローワークインターネットサービスから興味のあるコースを見つけるのもおすすめです。
受講するコースが決まったら、募集期間中に必要事項を記入した申込書を提出します。
その後、面接や筆記試験を受けて、合格通知を受けたら、再びハローワークで手続きすることとなります。
不合格になっても新しい訓練コースの募集へ再度申し込めるので、他のコースの受講を検討してみましょう。
職業訓練に関するよくある質問
最後に職業訓練に関するよくある質問に回答していきます。
自分に合った方法で就労に向けた活動をするためにも、あらかじめ疑問を解消しておきましょう。
職業訓練はどこで受講できる?
職業訓練を受ける場所は、職業訓練の種類によって異なります。
離職者訓練を受講できる代表的な場所は、以下の通りです。
- ポリテクセンター
- ポリテクカレッジ
- 職業能力開発校
- 民間教育訓練機関 など
障害者訓練は基本的に以下の施設で受けられます。
- 職業リハビリテーション
- 障害者訓練能力開発校
- 一般の公共職業能力開発校
- 企業や社会福祉法人、民間機関 など
なお、求職者支援訓練は民間教育訓練機関などが実施していることが多いです。
離職者訓練と障害者訓練のどっちを選ぶべき?
障害の配慮を受けながら職業訓練を受けたい場合は、障害者訓練を選ぶのがおすすめです。
一方、離職者訓練は障害者訓練より、受けられるコースの幅が広い特長があります。
選択肢を増やしたい方は、離職者訓練を選ぶことも視野に入れてみましょう。
職業訓練と就労移行支援のどっちを選ぶべき?
就労移行支援とは、障害のある方を対象に、就労に必要な訓練や適正に合った職場探しのサポートをする福祉サービスのことです。
就労移行支援は、通所することで主に以下のようなサービスを受けられます。
- 就職に向けたトレーニング
- 適正に合わせた求人の紹介
- 履歴書の添削や面接指導
- 職場定着の支援
就労移行支援では、自分のペースに合わせたスケジュールで就労に必要な訓練を進められるメリットがあります。
そのため、障害の配慮を受けながら、ゆっくり時間をかけて就労の準備を進めたい人に向いているといえます。
一方、職業訓練は比較的短期間で仕事に活かせる資格や知識を身に付けやすいため、可能な限り早く実践的なスキルを習得して就職先を見つけたい方におすすめです。
就労移行支援を利用するメリットは、こちらで詳しく紹介しています。
障害のある人は職業訓練を受けてスキルを身に付けよう
障害のある人が受けられる職業訓練には、離職者訓練や障害者訓練、求職者支援訓練があります。
それぞれ対象者や受講できるコースが異なるので、違いを押さえたうえで適切なものを選ぶことが大切です。
どのようなコースが受講できるのかは、ハローワークインターネットサービスから確認できます。
職業訓練を通して仕事に活かせる資格やスキルを身に付けたい方は、最寄りのハローワークに相談してみましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
コメント