障害のある子どもがいる方は、特別支援学校を卒業後、どのような進路を目指せるのか気になっているのではないでしょうか。
特別支援学校の卒業後は社会福祉施設への入所や通所、就職などの選択肢がありますが、どの進路が適しているかは障害の特性や適性によって異なります。
子どもに合った進路先を見つけるためにも、どのような選択肢があるのかを把握しておきましょう。
今回は特別支援学校の卒業後の主な進路先や就職先の探し方を紹介します。
子どもの特別支援学校への入学を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
特別支援学校の卒業後の主な進路先
文部科学省の「学校基本調査」で公表された、令和4年3月に特別支援学校高等部を卒業した人の進路状況は以下の通りです。
社会福祉施設などへの入所・通所 | 61.1% |
就職 | 29.9% |
大学・短期大学への進学 | 1.9% |
教育訓練機関などへの進学 | 1.6% |
その他 | 5.3% |
このデータから多くの方が社会福祉施設への入所・通所していること、全体の約3割が就職を選んでいることがわかります。
なお「その他」には以下のような人が該当します。
- 家事手伝いをしている人
- 外国の学校に入学した人
- 進路が未定の人 など
それぞれの進路先を詳しく見ていきましょう。
社会福祉施設などへの入所・通所
特別支援学校高等部の卒業者の進路先で最も多いのは、社会福祉施設などへの入所・通所です。
具体的には児童福祉施設や障害者支援施設への入所・通所、医療機関への入院、通院などが挙げられます。
なかでも、就労系障害福祉サービスの通所を選ぶ卒業生が多く、令和4年3月の卒業生は約33.0%が利用しています。
ここからは、代表的な就労系障害福祉サービスの就労移行支援と就労継続支援A型・B型について詳しく解説します。
就労移行支援
就労移行支援では、一般就労を目指している障害のある人を対象に、以下のサービスを提供しています。
- 就労に必要な知識やスキルを身に付ける訓練
- 適性に合った職業・職場探し
- 就労後の職場定着のための支援
細かいサポート内容は、就労移行支援を提供する事業者によって異なるので、利用を検討している方はホームページやパンフレットなどで確認しておきましょう。
就労移行支援を利用するメリットや注意点は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
就労継続支援A型・B型
就労継続支援A型・B型とは、障害や難病のある方を対象に、一定のサポートを受けながら働ける場を提供する福祉サービスのことです。
工賃をもらいながら、一般就労に必要な知識やスキルを身に付けられるのが特長です。
A型とB型の主な違いは、以下の通りです。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
対象者 | 原則18歳以上65歳未満 | 年齢制限なし |
雇用契約 | あり | なし |
平均賃金(令和4年度) | 月額83,551円 時間額947円 | 月額17,031円 時間額243円 |
ある程度安定して働ける人はA型、長時間の就労が難しい人はB型を選択するのがよいでしょう。
就労移行支援や就労継続支援A型・B型は、特別支援学校を卒業後、すぐに一般企業に就職することに不安がある人におすすめの選択肢です。
なお、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所を探す際は、以下のような検索サイトを活用してみましょう。
就労継続支援の支援内容や利用の流れは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
就職
特別支援学校高等部の卒業の進路で2番目に多いのは就職です。
令和4年3月の卒業生は、約3割が就職の道を選んでいます。
なお、就職者の多くがハローワークや学校の紹介によって就職しています。
特別支援学校を卒業して就職する場合、一般雇用もしくは障害者雇用の求人を選択するケースが多いです。
障害者雇用とは、障害のある方を対象とした雇用枠で、対象者は原則として障害者手帳を持っている人です。
一般雇用枠と比較して、障害への配慮を受けながら働ける反面、求人数が少ない傾向があります。
非正規雇用や時短勤務など正社員に絞らなければ、選択肢の幅は広がりますが、給与が下がりやすいので注意が必要です。
障害者雇用のメリットやデメリットは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
大学・短期大学への進学
特別支援学校高等部の令和4年3月の卒業生のなかで、大学や短期大学、大学・短期大学の通信教育部などに進学した人は2%ほどです。
なお、大学によっては特別支援学校高等部の卒業生が受験できないところもあるので注意が必要です。
特別支援学校高等部では職業教育や自立訓練を重視した教育を提供しています。
そのため、一般的な高等学校と異なり、各教科・科目の単位が取得できなかったり、取得しても単位数が限られていたりする場合があります。
大学・短期大学への進学を考えている場合は、事前に学校に相談して、大学進学にあわせた授業内容に編成してもらえるのかを確認しておきましょう。
教育訓練機関などへの進学
就職や大学・短期大学への進学ではなく、専修学校や公共職業能力開発施設などの教育訓練機関に進学する人もいます。
公共職業能力開発施設とは、働くために必要な技術や知識を取得して就職を目指すための学校です。
なかには、障害のある人の能力や適性に応じた訓練を提供する障害者職業能力開発校があります。
選択したコースや科目によって異なりますが、6ヶ月から2年間ほど通い、資格を取得したり企業で実習を受けたりして卒業後の就労を目指します。
なお、入校するためには筆記試験や面接などを受けなければなりません。
障害のある方が一般就労を目指すときに利用できる支援機関
障害のある方が一般就労を目指すときは、以下のような支援機関を利用しましょう。
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域障害者職業センター
それぞれ詳しく紹介します。
ハローワーク
ハローワークは就職を希望する障害のある人の求職登録を実施し、専門職員が障害の特性や適性、希望職種などをもとに就職のアドバイスをする機関です。
特別支援学校の生徒やその保護者は、就職活動のアドバイスや就職時に必要な手続きのサポートが受けられます。
実際にハローワークを利用する際は、学校からのサポートも受けながら求職登録をしたり職業相談を受けたりすることになります。
なお、ハローワークのサポートは、特別支援学校を卒業したあとも無料で受けられるので、就職後に困ったことがあっても安心です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害のある人の生活面から就業面まで幅広く相談や支援を行う機関です。
就業面の支援では、職業準備訓練や職場実習、就労移行支援事業者へのあっせんなどの支援を受けられます。
生活面の支援では、職場定着に向けた支援や生活習慣の形成、健康管理、金銭管理などがサポート対象です。
卒業後も無料で登録できるので、就職先が決まっていない場合も、自立を目指した相談や支援を受けられます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害のある方に対し、職業評価や職業準備支援、職業リハビリテーションを実施する支援機関です。
職業評価では、結果をもとに適性職種や就職活動の進め方に関する助言をもらえます。
職業準備支援では、働くために必要なスキルの向上を目的に、センター内での作業体験や講習、技能訓練が受けられます。
特別支援学校卒業後の進路に迷ったら学校や支援機関に相談しよう
特別支援学校学校の卒業後は、社会福祉施設などのへの入所や通所、就職などの選択肢があります。
しかし、どの進路が適しているかは障害の特性や適性によって異なるので、さまざまな選択肢を知っておくことが大切です。
特別支援学校の卒業後の進路先に迷ったときは、家族だけで悩まず、学校や支援機関への相談を検討しましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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