介護保険の要介護認定を申請した方のなかには、非該当と判定されて困っている方もいるのではないでしょうか。
要介護認定で日常生活に支援や介助を必要としないと判断されると非該当と判定されます。
なかには、認定調査や主治医意見書で心身状態をうまく伝えられず、実際の状態と合わない判定結果となるケースがあるので注意が必要です。
そこで本記事では、要介護認定で非該当になる理由や非該当になりやすいケースを解説します。
再申請の流れについても解説しているので、判定認定に納得できていない方はぜひ最後までご覧ください。

要介護認定で非該当になる理由

要介護認定で非該当と判定された人は、日常生活に支援や介助が必要なく、自立して生活できていると判断されたといえます。
要介護認定は、介護が必要な状態かどうか、またどの程度介護を要するかによって判定するものです。
そのため、要介護度は病気の重症度ではなく、必要とされる介護量によって決まります。
例えば、がんの診断を受けている方でも、日常生活動作が自立していたり、他者の支援を受けずに生活していたりすると非該当と判定される場合があります。
なかには、本来介護が必要にもかかわらず、心身状態についてうまく伝えられていないことで非該当となるケースもあるでしょう。
要介護認定で非該当になりやすいケース

要介護認定で非該当になりやすいケースとして、以下の2つが挙げられます。
- 認定調査で実際の心身状態をうまく伝えられなかった
- 現在の心身状態が主治医意見書に正しく反映されていない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
認定調査で実際の心身状態をうまく伝えられなかった
要介護認定の認定調査の際に、心身状態や困りごとをうまく伝えられなかった場合は、実際の状態に合わない判定が下りる可能性があります。
要介護認定の認定調査で収集する情報は、判定結果を大きく左右するものです。
そのため、認定調査では、普段の生活状況や必要な支援を具体的に伝えることが大切です。
一方で、自分の弱みを見せたくない思いから、実際の心身状態とは異なる内容を伝えてしまう場合があります。
その結果、サポートを必要とする方であっても、非該当と判定されてしまう可能性があります。
適切な要介護認定を受けるためにも、認定調査に家族が立ち会って、第三者から見た生活状況を具体的に調査員に伝えるようにしましょう。
現在の心身状態が主治医意見書に正しく反映されていない
現在の心身状態が主治医意見書に反映されていない場合も、非該当と判定されやすくなります。
主治医意見書とは、医師が病気やケガの状況などについて記載する書類のことです。
コンピュータによる一次判定や介護認定審査会では、主治医意見書の内容が参考にされます。
そのため、主治医意見書の内容によっては、支援や介助が必要ないと判断される可能性があるので注意が必要です。
医師は、本人や家族が訴える生活上の不自由な点などを主治医意見書に記載してくれることがあります。
要介護申請のための意見書作成を依頼する際は、あらかじめ医師に日常生活の困りごとや生活で手助けが必要な場面を伝えておきましょう。
認定結果に納得がいかないときは再申請や不服申し立てができる

要介護認定の結果に納得がいかないときは、再申請もしくは不服申し立て(審査請求)ができます。
不服申し立てでは、認定が妥当であるかの審査に加えて、再び要介護認定を受けることになるので、結果が出るまでに時間がかかります。
早めに要介護認定の結果を知りたい場合は、再申請を選ぶのがおすすめです。
再申請は最初に申請をしたときと同じく以下の流れで進めます。
- 自治体の窓口に要介護認定申請書を提出する
- 認定調査を受ける
- 要介護認定の結果が自宅に届く
なお、再申請時も主治医意見書を記載してもらう必要があるので、その旨を医師に伝えておきましょう。
ただし、再申請をしても、再び非該当となる可能性があります。
その場合は、自治体の窓口や地域包括支援センターに相談をして、非該当になっても利用できるサービスを活用しましょう。
要介護認定で非該当になっても利用できるサービス

要介護認定の非該当の判定を受けた場合でも、以下のサービスを利用できる可能性があります。
- 介護予防・日常生活支援サービス事業
- 一般介護予防事業
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
介護予防・日常生活支援サービス事業
介護予防・日常生活支援サービス事業は、要支援1・2の認定を受けた人と基本チェックリストにより「事業対象者」と判定された人が利用できます。
基本チェックリストとは、心身の状態を確認するための25項目の質問票のことです。
例えば「1人で外出しているか」「椅子から何もつかまらずに立ち上がれるか」などの質問が記載されています。
チェックリストから日常生活に必要な機能が低下するリスクが高いと判定された場合は、訪問型サービスや通所型サービスを利用できる可能性があります。
訪問型サービス
訪問型サービスとは、訪問介護士や住民ボランティアの身体介助や家事援助を受けられるサービスのことです。
介護保険サービスの訪問介護と同様の支援を受けられる場合も多く、非該当の人でも自宅でホームヘルパーによる支援を受けられます。
訪問型サービスで受けられるのは、以下のような支援です。
- 掃除や洗濯、調理などの家事支援
- ゴミ出しや電球交換などの困りごとへの支援
- 専門職によるリハビリテーション、栄養に関する助言 など
ただし、支援内容や利用回数、費用は自治体によって異なります。
どのような支援が受けられるか知りたい方は、自治体の窓口や地域包括支援センターで確認してみましょう。
通所型サービス
通所型サービスとは、デイサービス施設などに通って、食事や入浴などの介助を受けるサービスです。
介護保険サービスの通所介護(デイサービス)と同様の支援を受けられる場合があります。
例えば、以下のような支援を受けられます。
- 食事や入浴、排泄介助
- レクリエーションや体操
- 専門職によるリハビリテーション、口腔ケア指導
- ほかの利用者との交流 など
通所型サービスの利用回数や費用は、自治体によって異なります。
また、施設によって受けられるサービスの内容や特色が異なるので、地域包括支援センターの職員に相談したり、実際に見学したりしたうえで自分に合った施設を見つけましょう。
一般介護予防事業
一般介護予防事業は、65歳以上のすべての高齢者が利用できる事業です。
この事業は、高齢者が要介護状態になるのを防ぐことを目的としています。
実施内容は自治体によって異なりますが、主に以下のような事業が実施されています。
- 介護予防教室
- 体操教室
- フレイル予防講習会
- 認知症予防のための脳トレ など
フレイルとは、加齢に伴って心身が衰える状態のことをいいます。
一般的にフレイルは、要介護状態となるリスクが高まっている状態であると考えられています。
そのため、フレイル予防に取り組めば、要介護状態への移行を抑えることができます。
自治体ごとの具体的な事業内容は、自治体のホームページや広報誌などに記載されているので、事前にどのような事業があるのか確認してみましょう。
要介護認定で非該当になっても心身状況に応じた適切な支援を受けよう
要介護認定で非該当と判定された人でも、介護予防・日常生活支援サービスや一般介護予防事業などの支援を受けられます。
心身機能低下を予防するためにも、自治体のサービスを利用して適切なサポートを受けることが大切です。
なお、認定結果に納得がいかない場合は、再申請や不服申し立てができます。
再度認定を受ける場合は、認定調査に家族が立ち会ったり、あらかじめ主治医に日常生活で困っている症状を伝えたりしましょう。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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