老健は長期入所ができない?その理由と退所後の生活先を解説

福祉制度
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介護老人保健施設(以下、老健)は、原則として長期入所ができない施設であることをご存じでしょうか。

リハビリや医療的ケアが充実している老健は、病院から退院後に身体機能のさらなる回復を目指して入所する方が多い施設です。

自宅に帰ることが目標なので、一定期間集中的にリハビリを受けられるというメリットがあります。

しかし、自宅生活に不安をもっている方のなかには、老健退所後の生活先に悩むこともあるでしょう。

そこで本記事では、老健の入所期間や入所期間が決められている理由、退所後の生活先を解説します。

老健を退所した後の生活先に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

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老健の入所期間は原則3~6ヶ月

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老健に入所できるのは、自宅に退所するまでの期間として原則3〜6ヶ月とされています。

この期間は、疾患別リハビリとして厚生労働省が定めている以下の標準的算定日数に基づいて定められています。

疾患名標準的算定日数
呼吸器疾患90日
心大血管疾患150日
運動器疾患150日
脳血管疾患など 180日
廃用症候群120日

標準的算定日数とは、リハビリの継続により身体機能回復の効果が見込まれる期間として、定められた期間です。

これらの期間を過ぎた後、リハビリ専門職による個別リハビリから日常生活をリハビリとして捉える生活リハビリに移行します。

そのため、集中的なリハビリを目的とした老健からは退所を促されるのです。

なかには、長期入所ができる老健もあります。

令和元年介護サービス施設・事業所調査結果によると、老健の平均在所日数は309. 7日で約10ヶ月となっています。 

このデータから年単位で入所している方もいることがわかるでしょう。

老健という同じ機能をもつ施設であっても、入所期間が異なる場合があるのです。

老健の入所期間に差がある理由

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老健の入所期間に差がある理由は、以下の2つです。

  • 老健機能の違い
  • 地域性

老健機能の違い

老健は、介護報酬によって5種類の区分に分かれています。 

介護報酬とは、介護サービスの対価として施設に支払われる報酬のことで、自宅退所した方や入退所数の割合などの実績によって区分が変わります。

最も介護報酬が高い「超強化型老健」は、要件の一つである入退所者数の割合を高く維持する必要があります。

積極的なリハビリを受けられる点はメリットですが、リハビリを終えた方は速やかな退所を促されることが多くなります。

一方、最も介護報酬が低い「その他型老健」は入退所者数の要件を満たすことを義務付けられていません。

そのため、入所待機者がいない限りは退所を勧められず、退所期限も定められないので、長期入所しやすくなるのです。

地域性

地方にある老健は、高齢者人口の少なさにより都市部の老健に比べて空室があることも多いです。

施設側としては短期で退所されるよりも、長期入所してもらう方が介護報酬が多くなります。

そのため、空室が出やすい地方の老健では、入所期間が長期になりやすいといえるでしょう。

老健から他の老健に入所できる

老健の退所が必要になったときは、他の老健への入所も検討できます。 

令和元年介護サービス施設・事業所調査結果によると、退所者全体の1.2%の方が老健から老健に移動しています。

他の老健に移動すると、リハビリを継続できる点や月額費用が大きく変わらない点は大きなメリットです。

しかし他の老健に移動した場合、再度6ヶ月経過すると退所が必要になる可能性があります。

生活先が定まらないので、環境変化によるストレスを感じる場合もあることに注意が必要です。

また、上述したように老健は「自宅に帰ること」を目的にしているので、老健への転居はなるべく避けたいと考えている施設もあります。

老健を退所する際は、自宅や長期間入所できる施設に移動できないかなども検討するとよいでしょう。

老健を退所したあとの生活先

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老健を退所したあとは、自宅や以下の介護施設に転居できます。

  • 自宅
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護医療院
  • 有料老人ホーム

自宅

老健は自宅での生活を目指してリハビリを行う施設なので、退所する際はまず自宅退院が候補になります。

身体機能や家族の介護力などをふまえて、自宅退院が可能か検討することが大切です。

自宅退院の際は、通所リハビリや訪問リハビリを利用すれば、介護度によって週に1〜3回程度リハビリを継続できる可能性があります。

また、介護者の負担が大きい場合、ショートステイを利用して定期的に休息をとることも可能です。

老健の退所前はリハビリスタッフが自宅訪問を行い、手すりの設置場所や福祉用具の選定など相談に応じてくれます。

介護サービスの利用を決めたり自宅内の環境調整を行ったりすることで、安心して自宅での生活を再開できるでしょう。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、原則要介護3以上の高齢者が長期間入所できる公的施設です。

令和元年の介護サービス施設・事業所調査結果では、老健の退所後に施設入所する方の中で、特別養護老人ホームの割合が最も多くなっています。 

介護量が多い方であっても、入所期限が決められておらず、看取りまで対応してもらえるのが特長です。

入所費用は、老健と同様に所得に応じて減免されるので、費用を抑えたい人にも向いています。

一方、退所者がいない分、入所までの待機期間が長く年単位で待機しなければならない施設があることに注意が必要です。

特別養護老人ホームを退所先としたい場合は、早めに申込みをしておきましょう。

介護医療院 

介護医療院は、特別養護老人ホーム、老健と同じく介護保険施設の一つです。

療養を必要とする方へ医療的ケアや介護を行う施設であり、長期入所ができます。

介護医療院は身体の状態に応じてⅠ型・Ⅱ型に分類されています。

Ⅰ型 ・重篤な症状がある方
・ほかの疾患を合併している認知症高齢者 など
Ⅱ型 Ⅰ型に比べて症状が安定している方

老健から退所する方は病状が安定しているので、Ⅱ型に入所することが多くなります。

Ⅱ型は老健と同様の人員配置であり、介護体制が変わらないのが安心できるポイントです。

ただし、老健に比べるとリハビリの回数が減ってしまうので、身体機能の回復を目的とした入所は難しいことを認識しておきましょう。

介護医療院のサービス内容や入所の流れは、以下の記事で詳しく紹介します。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、24時間体制で介護を受けられる民間施設です。

入居要件やサービス内容は施設によって異なります。

なかには、リハビリに特化していて個別訓練が受けられる施設もあるので、いくつかの施設を比較して選びましょう。 

介護付き有料老人ホームは初期費用がかかったり、老健に比べて月々の支払いが高くなったりする可能性があります。

安心して入所を継続するためにも、入所前に費用を確認しておくことが大切です。

老健は入所期間が決まっているのを認識しておこう

老健の入所期間は原則3〜6ヶ月となっているため、長期入所することが基本的にできません。

自宅での生活を目標として集中的なリハビリを受けられる一方で、リハビリを受けられる期間には制限があります。

そのため、老健に入所する際は、退所後の生活を見据えておくことが大切です。

自宅へ退所する以外にも、特別養護老人ホームや介護医療院といった多くの選択肢もあります。

いずれも入所要件が決まっていたり、空きがなかったりすると入所できないので、早めに老健の相談員に相談して転居の準備を進めましょう。

監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士

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