障害福祉サービスを利用している方が65歳になったときに介護保険サービスへの移行を求められる可能性があることをご存じでしょうか。
65歳で介護保険の第1号被保険者となると、すべての人が介護保険サービスを利用できるようになります。
障害福祉サービスと同等の介護保険サービスがある場合は、介護保険が優先されることになるので、混乱してしまう方も多いはずです。
そこで本記事では、障害福祉サービスから介護保険サービスに移行する方法を紹介します。
介護保険サービスへ移行後の費用負担を軽減する制度についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
介護保険サービスに移行する理由
65歳になったときに介護保険サービスに移行する理由は、障害者総合支援法第7条で障害福祉サービスに相当するサービスがある場合、介護保険サービスが優先することが定められているためです。
例えば、障害福祉サービスで居宅介護を利用していた方は、原則として同等の介護保険サービスである訪問介護へ移行することとなります。
しかし、同等の介護保険サービスに移行しても、同じ支援を受けられるとは限りません。
利用する事業所が異なったり、利用できる回数が変わったりすることで受けられる支援が一部変わってしまう可能性があります。
支援内容が変わると、生活に影響が出るのではないかと不安を感じる方もいるでしょう。
なかには、環境や生活の変化によって症状が悪化することを防止するために障害福祉サービス継続を認めている自治体もあるので、不安を感じたときは自治体に相談してみましょう。
65歳を過ぎても障害福祉サービスを利用できる場合がある
上述したように、原則として65歳になったタイミングに介護保険サービスへ移行する必要がありますが、障害福祉サービスしか受けられないサービスであれば継続利用できる可能性があります。
該当する主なサービスは、以下の通りです。
サービス名 | 内容 |
同行援護 | 視覚障害者を対象とした外出時の支援 |
行動援護 | 知的障害または精神障害のある方を対象とした外出時の支援 |
自立訓練(生活訓練) | 日常生活や社会生活の自立に向けた訓練 |
就労移行支援 | 一般企業などへの就労に向けた訓練 |
就労継続支援 | 一般企業などでの就労が難しい方を対象とした訓練や働く場の提供 |
移動支援 | 屋外での移動に困難がある方を対象とした外出時の支援 |
これらのサービスは、介護保険サービスに同等のサービスがないため、ほとんどのケースで継続利用が認められます。
また、これらに該当しない障害福祉サービスであっても、以下のケースであれば、継続利用できる可能性があります。
- 介護保険サービス事業所に空きがない
- 要介護認定結果が非該当になった
- 障害特性や医療的ケアの程度により介護施設などでの対応が難しい
現在利用している障害福祉サービスが、継続できるかわからない場合は、担当の相談支援専門員に相談してみましょう。
介護保険サービスへの移行方法
介護保険サービスに移行する場合は、以下のような手続きが必要です。
- 障害福祉サービスの継続可否を確認する
- 65歳の誕生日3ヶ月前以降に介護保険を申請する
- 認定結果が自宅に郵送される
- ケアマネジャーを決めて、介護保険サービスについて相談する
- 介護保険サービス事業所と契約する
上述したように、障害福祉サービス固有のサービスであれば、継続利用できる可能性があります。
継続できないサービスの場合は、65歳の誕生日3か月前以降に要介護認定を受け、介護保険サービスへの移行手続きをしておくことが大切です。
要介護認定は、自治体の窓口で申請手続きをしてから結果が出るまでに1ヶ月半前後かかることもあります。
切れ目なく支援を受けるためにも、早めに申請しておきましょう。
認定結果が自宅に届いたら、ケアマネジャーを決めたうえで介護保険サービスの利用内容や方法を相談しなければなりません。
ケアマネジャーとは、介護保険のケアプランの作成やサービス事業者などの調整を行う専門職です。
必要な支援を受けるためにも、相談支援専門員とケアマネジャーなどの関係機関同士の情報共有が欠かせません。
介護保険サービスの開始前には、利用者も交えた情報共有の場が設けられることがあるので、どのような支援を受けたいのかの希望をまとめておきましょう。
介護保険に切り替える際の注意点
介護保険に切り替える際は、以下の注意点を確認しておきましょう。
- サービス量が減ってしまう場合がある
- 費用負担が増える可能性がある
サービス量が減ってしまう場合がある
介護保険サービスに移行する場合、障害福祉サービスで認められていた支援の一部が受けられなくなる可能性があります。
例えば、障害福祉サービスで全般的な家事の支援を受けていた方であっても、要介護度が低く認定されれば、支援回数が減ってしまいます。
これまで通りの支援が受けられなくなることで、不安を感じたり混乱が生じたりする場合もあるでしょう。
介護保険サービスに移行する際は、事前にどのような支援を受けられるかをケアマネジャーに確認しておくことが大切です。
費用負担が増える可能性がある
介護保険サービスに移行することで費用負担が増えてしまう可能性があります。
なぜなら、障害福祉サービスと介護保険サービスの負担上限額が異なるからです。
例えば、障害福祉サービスは市町村税非課税世帯であれば無料で利用できます。
一方、介護保険サービスは市町村民税非課税世帯の方でも1割の自己負担が発生します。
そのため、同様の支援であっても、毎月の費用負担が増えてしまう可能性があるでしょう。
要件を満たすと介護保険サービスの費用負担が軽減される
介護保険サービスの利用によって、費用負担が増えてしまった場合は、後日還付を受けられる場合があります。
この制度を「新高額障害福祉サービス等給付費」といい、以下の要件をすべて満たした65歳以上の方が対象です。
- 65歳に達する日の前に5年間以上、居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所のいずれかを利用していた
- 本人およびその配偶者が市町村民税非課税、または生活保護を受給していた
- 障害支援区分が区分2以上であった
- 介護保険サービスを利用していない
- 障害福祉サービスに相当する介護保険サービス(訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、地域密着型通所介護、小規模多機能型居宅介護)を利用している
これらの要件を満たしている場合は、介護保険サービス費を支払い後、自治体で手続きをすることで還付が受けられます。
ただし、高額介護サービス費や高額医療合算介護サービスによる還付が優先となります。
高額介護サービス費などの還付額より利用料金が高くなっている場合は、忘れずに手続きをしましょう。
高額介護サービス費については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
必要な支援を受け続けるために介護保険を申請しよう
65歳になっても、障害福祉サービス固有のサービスであれば、継続利用できる可能性があります。
しかし、介護保険でも同等の支援を受けられる場合は、介護保険サービスへの移行が進められます。
必要な支援を受け続けるためにも、65歳の誕生日3ヶ月前を過ぎたら介護保険の申請をしましょう。
また、介護保険サービスに移行すると、費用負担が増える可能性があります。
新高額障害福祉サービス等給付費や高額介護サービス費を利用すると、費用負担を軽減できる場合があるので、忘れずに手続きをしましょう。
介護保険サービスに移行後の費用負担を不安に感じている方は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのがおすすめです。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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