介護医療院とはどのような施設なのだろうと疑問を感じていませんか。
介護医療院は、介護老人福祉施設や介護老人保健施設、介護療養型医療施設と同じく介護保険施設の一種です。
外観が病院と似ているため、介護施設というイメージが湧かなかったりどのようなサービスを受けられるのかわからなかったりする方もいるでしょう。
そこで本記事では、介護医療院の特徴や費用を詳しく紹介します。
ほかの施設との違いやメリット・デメリットについても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
介護医療院とは
介護医療院は、長期療養を必要とする要介護高齢者へ医療的ケアや介護を行う介護保険施設です。
介護療養型医療施設(療養病床)が2017年度末で廃止することに伴い、新たな生活施設として創設されました。
ここでは、介護医療院の対象者やサービス内容、入所費用などについて紹介します。
対象者
介護医療院の対象者は、要介護1〜5の認定を受けた方です。
要介護高齢者のための生活施設であるため、自立・要支援の方は入所できません。
身体の状態に応じてⅠ型・Ⅱ型に分類され、ケア内容や職員の人員配置が異なります。
Ⅰ型 | ・重篤な症状がある方 ・ほかの疾患を合併している認知症高齢者 など |
Ⅱ型 | Ⅰ型に比べて症状が安定している方 |
重篤な症状があっても入所できるⅠ型は、医師や看護師などの配置数が多く、手厚い医療的ケアを受けられる環境が整っています。
一方、症状が安定している方を対象としているⅡ型は、介護老人保健施設と同様の人員配置です。
重篤な症状の方はⅡ型に入所できなかったり、症状が軽度の方はⅠ型の対象とならなかったりするので、入所相談の際に確認しておくことが大切です。
なお、同じ介護医療院の中でも別フロアであればⅠ型・Ⅱ型を設置している施設もあるので、入所する居室によっては職員の配置が異なる場合もあります。
サービス内容
介護医療院は主に医療的ケア、介護サービス、日常生活のサポートが受けられます。
医療的ケア | ・点滴や酸素療法 ・褥瘡(床ずれ)のケア ・喀痰(かくたん)吸引 ・胃ろうや経管栄養 など |
介護サービス | ・食事や排泄などの介助 ・レクリエーション ・機能訓練 など |
日常生活のサポート | ・掃除や洗濯などのサポート ・生活相談 など |
Ⅰ型であれば、がんや神経難病と診断されている方、重度の認知症の方などに対して、痰の吸引や胃ろう管理などが24時間体制で受けられます。
ターミナルケアや看取りにも対応しており、入所期限が定められていないため、終の棲家としても生活できるのが特徴です。
介護サービスとして、リハビリ専門職による機能訓練なども受けられますが、回数や時間などは施設によって異なるので、入所前にあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
入所費用
介護医療院を利用する際は、施設サービス費と居住費、食費などがかかります。
施設サービス費は、要介護度や居室の種類などによって以下のように異なります。
【Ⅰ型・サービス費(Ⅰ)の場合(日額)】
従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | |
要介護1 | 714円 | 825円 | 842円 |
要介護2 | 824円 | 934円 | 951円 |
要介護3 | 1,060円 | 1,171円 | 1,188円 |
要介護4 | 1,161円 | 1,271円 | 1,288円 |
要介護5 | 1,251円 | 1,362円 | 1,379円 |
【Ⅱ型・サービス費(Ⅰ)の場合(日額)】
従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | |
要介護1 | 669円 | 779円 | 841円 |
要介護2 | 764円 | 875円 | 942円 |
要介護3 | 972円 | 1,082円 | 1,162円 |
要介護4 | 1,059円 | 1,170円 | 1,255円 |
要介護5 | 1,138円 | 1,249円 | 1,340円 |
例えば、Ⅰ型・サービス費(Ⅰ)の多床室に要介護5の課税世帯の方が入所した場合の1ヶ月(30日)の費用は以下の通りです。
施設サービス費1,362円×30日+居住費377円×30日+食費1,445円×30日=95,520円
※基準費用額:多床室の居住費377円/日、食費1,445円/日で計算
居室の種類によって居住費が高くなったり、加算や日用品費などを加えたりすることで、10~15万円/月ほどかかる場合があるので、入所費用をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
施設サービス費と居住費、食費は所得に応じて減免を受けられる場合があります。
施設サービス費であれば一定額を超えると超過分の払い戻しを受けられる「高額介護サービス費」、居住費や食費であれば「特定入所者介護サービス費」が利用できます。
いずれも自治体で手続きできる制度なので、これらの減免制度の対象になる方は活用しましょう。
それぞれの減免制度については、以下の記事で説明しています。
入所の流れ
介護医療院の入所の流れは、以下の通りです。
- 介護医療院のソーシャルワーカーやケアマネジャーに入所相談をする
- 入所相談後に施設見学や事前面談をする
- 入所決定
- 入所
入院中の方は病院のソーシャルワーカー、自宅や施設に入所中の方はケアマネジャーから相談してもらうとスムーズです。
入所相談の際には、主治医の診断書やケアマネジャーからの情報提供書が必要となります。
円滑に入所相談を進めるためにも、あらかじめ主治医やケアマネジャーに相談しておくとよいでしょう。
介護医療院のメリット
介護医療院に入所するメリットは、以下の二つです。
- 長期入所が可能
- 医療的ケアが受けられる
長期入所が可能
介護医療院は、入所期間が定められていなかったり、要介護度が上がっても退所を迫られなかったりするため、長期入所がしやすいメリットがあります。
例えば、介護老人保健施設の入所期間は原則3ヶ月と定められており、身体の状態が回復すれば退所を求められてしまいます。
自宅に帰れない場合は、ほかの入所先を決めなければならないので、家族の負担が増えてしまうでしょう。
介護医療院は長期療養を前提としているので、身体の状態が変化するたびに転居先を検討する手間がなく、本人や家族の負担軽減にもつながります。
医療的ケアが受けられる
Ⅰ型・Ⅱ型ともに医師と看護師が常駐している介護医療院は、医療的ケアが受けられます。
特にⅠ型は人員配置が手厚いので、さまざまな医療処置を必要とする方や重度の認知症の方でも安心です。
ターミナルケアや看取りにも対応しているので、万が一状態が変化した場合でも適切なケアを受けられます。
介護医療院のデメリット
介護医療院のデメリットは、以下の二つです。
- 施設数が少ない
- 個室が少ない
施設数が少ない
2018年に新設された介護医療院は、ほかの介護保険施設に比べると施設数が多くありません。
そのため、入所を希望しても満室だったり、入所を断られたりする可能性があります。
入所対象者は要介護1〜5の認定を受けている方となっていますが、施設側としては要介護度が高いほうが報酬も高くなります。
そのため、介護度の高い方の入所が優先されることで、要介護度の低い方は入所を断られる可能性も考えられるでしょう。
入所までの待機期間が長い場合は、一時的にほかの介護施設へ入所するなどの対応が必要な場合もあります。
個室が少ない
介護療養病床から転換した介護医療院は、病院の4人部屋などの多床室をそのまま活用しているケースがあり、個室が少ない施設も多いです。
個室がある場合でも部屋数が少ないため、希望通りに入所できない可能性もあるでしょう。
ただし、生活施設としての環境が整えられている介護医療院は、多床室であっても家具やパーテーションなどで仕切りを設置するよう定められています。
カーテンのような簡易的な仕切りは認められておらず、最低限のプライバシーが守られるように国が基準を設けています。
入所後にイメージと違ったという事態を避けるためにも、介護医療院を選ぶ際は事前に見学をしたうえで、施設環境を確認しておくとよいでしょう。
医療的ケアと介護が必要な方は介護医療院の入所を検討しよう
介護医療院は、要介護高齢者が医療的ケアと介護の両方を受けられる生活施設です。
医師や看護師が配置されているため、重篤な症状がある方でも安心して長期療養ができます。
ただし、創設されたばかりの施設なので、施設数が少なかったり環境が整っていなかったりする場合もあります。
サービス内容や入所費用を理解するためにも、入所前には見学しておくことが大切です。
また、介護医療院に入所する際は、所得に応じて減免制度の利用ができます。
入所手続きや制度利用でわからないことがある場合は、介護医療院のソーシャルワーカーやケアマネジャー、自治体に相談するのがおすすめです。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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