介護保険負担限度額認定は、一定以上の預貯金があると適用を受けられない場合があります。
介護保険負担限度額認定の認定を受けるときは、金融機関への照会によって預貯金額を漏れなく調査されます。
虚偽申告をするとペナルティを受ける可能性があるので、資産額を正しく申告することが大切です。
本記事では、介護負担限度額認定を受ける際の預貯金額の調査方法や、虚偽申告によるペナルティについて解説します。
交付要件や申請方法も解説するので、介護保険負担限度額認定を受けたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

介護保険負担額認定では預貯金額を調査される

介護保険負担限度額認定とは、特別養護老人ホームなどの介護保険施設への入所またはショートステイ利用時の食費や居住費の自己負担額を軽減する制度です。
この制度では、所得や預貯金額に応じて自己負担額が決定されます。
介護保険負担限度額認定の認定を受ける際、自治体は金融機関への照会をおこない、預貯金額を調査します。
自治体への申告額と実際の預貯金額に差異があると、虚偽申告を疑われる可能性があるので、正確な金額を申告しましょう。
金融機関への照会時には、直近3か月の取引履歴も確認されることがあるので、不自然な高額取引があると、使途について説明を求められる場合があります。
不正が発覚したときは認定が取り消されるだけでなく、これまでの負担軽減額、または返還額の3倍の納付を求められることがあります。
介護保険負担限度額認定証の交付要件

介護保険負担限度額認定は世帯全員が住民税非課税、かつ以下の要件に該当する場合に適用されます。
負担段階 | 所得状況 | 預貯金の基準額 |
第1段階 | 生活保護を受給している | 要件なし |
世帯全員が老齢福祉年金を受給している | 単身 1,000万円以下 夫婦 2,000万円以下 | |
第2段階 | 世帯全員の年金収入を含む所得が80万円以下 | 単身 650万円以下 夫婦 1,650万円以下 |
第3段階(1) | 世帯全員の年金収入を含む所得が80万円超120万円以下 | 単身 550万円以下 夫婦 1,550万円以下 |
第3段階(2) | 世帯全員の年金収入を含む所得が120万円超 | 単身 500万円以下 夫婦 1,500万円以下 |
老齢福祉年金とは、昭和36年の国民年金制度開始時にすでに高齢だった人が、年金を受け取れるように設けられた制度です。
介護保険負担限度額認定では、老齢福祉年金や老齢年金のほか、障害年金・遺族年金などの非課税年金も収入として判断されます。
預貯金額が基準を超過する場合や、世帯内に住民税の課税対象者がいる場合は、制度が適用されません。
なお、65歳未満の第2号被保険者は、負担段階にかかわらず、預貯金1,000万円以下(夫婦は2,000万円以下)であれば適用を受けられます。
また、夫婦の預貯金額を判断する際、法律上の婚姻関係がない場合でも、以下のケースでは配偶者として扱われます。
- 配偶者と内縁関係である
- 住民票上で世帯分離をしている
- 離婚後も同居している
これらの要件に当てはまっていたとしても、配偶者が行方不明となっていたり、配偶者からDVや暴力を受けていたりする場合は、預貯金額の調査の対象外となります。
自身が適用対象なのかを知りたいときは、自治体の窓口に相談しましょう。
介護保険負担限度額認定の預貯金に含まれるもの

介護保険負担限度額認定の預貯金として見なされる資産は、以下の通りです。
預貯金に含まれるもの | 確認方法 |
預貯金(普通・定期) | 直近分を記帳した通帳の写し(①~③すべて) ①金融機関、支店名、口座番号、名義人が確認できるページ ②直近2~3ヶ月のページ及び最終取引日と口座残高のページ ③定期預金の残高のページ |
株式や国債、地方債、社債、投資信託 | 証券会社や銀行の口座残高の写し |
金・銀などの貴金属 (資産価値が把握できるもの) | 購入先の口座残高の写し |
タンス預金 | 自己申告 |
住宅ローンや借入金などの負債 | 借用証書や残高証明書などの写し |
預貯金額の申告では、残高がある預金口座をすべて申告する必要があります。
総合口座を利用している場合は、定期預金をしていないことを証明するために該当ページのコピーを取っておきましょう。
住宅ローンや借入金の負債がある人は、預貯金などの合計額から負債額を控除して計算します。
なお、生命保険や現在の資産価値を把握しにくい腕時計、宝石などの貴金属は含まれません。
介護保険負担限度額認定を受けるときの注意点

介護保険負担限度額認定を受ける際の注意点は、以下の通りです。
- 年1回更新する必要がある
- 所得や資産額が変わったときは自治体への報告が必要になる
- サービス利用前に申請しなければならない
それぞれ詳しく紹介します。
年1回更新する必要がある
介護保険負担限度額認定証の有効期限は、申請月の1日から次の7月31日までです。
自動更新ではないため、更新の手続きが必要となります。
自治体から更新案内が届いたら、速やかに手続きをしましょう。
所得や資産額が変わったときは自治体への報告が必要になる
年金額が上がったりまとまった収入を得たりして、所得や預貯金額が認定要件の金額を超過した場合は、介護保険負担限度額認定の対象外となります。
所得や資産額が変わったことを報告していない場合は、虚偽申告と見なされる可能性があります。
虚偽申告によるペナルティを受けないためにも、所得や預貯金額が変わったときは、すぐに自治体へ報告しましょう。
サービス利用前に申請しなければならない
介護保険負担限度額認定の適用が受けられるのは申請月の初日からなので、月をさかのぼって受けることはできません。
介護費用の負担を抑えるためにも、介護施設の入所やショートステイの利用が決まったら、速やかに手続きをしましょう。
介護保険負担額認定の申請方法

介護保険負担限度額認定の適用を受けるためには、自治体への申請が必要です。
申請の際は、以下の書類を自治体に持参しましょう。
- 介護保険負担限度額認定申請書
- 預貯金などの資産状況が確認できる書類
- 本人の介護保険被保険者証
- 申請者の本人確認書類
介護保険負担限度額認定申請書は、自治体のホームページや窓口で取得できます。
自治体によっては、ほかの書類提出を求められる可能性があるため、あらかじめ自治体のホームページなどで確認しておきましょう。
介護保険負担限度額認定を受けるときは預貯金額を正しく申告しよう
介護保険負担限度額認定の認定を受ける際、預貯金額の調査がおこなわれます。
一部の預金口座しか申告しなかったり、株や投資信託の口座残高を正確に伝えなかったりすると、虚偽申告と見なされてしまう可能性があります。
不正が発覚すると認定取消だけでなく、これまでの負担軽減額の返還を要求されたり、返還額の3倍の納付を求められたりするので、預貯金額は正しく申告するようにしましょう。
介護サービス費の支払いに不安を抱えている方は、ファイナンシャルプランナーへの相談がおすすめです。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
監修者:東本 隼之
AFP認定者、2級ファイナンシャルプランニング技能士
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